糖尿病と骨折リスクの関連が指摘される中、エビデンスは不十分として、スウェーデン・Universtiy of GothenburgのKristian F. Axelsson氏らは後ろ向き全国コホート研究を実施。結果をPLoS Med(2023; 20: e1004172)に報告した。
58万例超の糖尿病患者を解析
糖尿病患者では骨折リスクが上昇することがメタ解析により報告されている一方、薬物療法非施工例や経口薬使用例では上昇しないまたは低下し、インスリン製剤使用例でのみリスクの上昇が見られるとする大規模コホート研究もあるという。そこでAxelsson氏らは、スウェーデンの全国医療レジストリを用いた後ろ向きコホート研究を実施し、糖尿病と骨折リスクを検討した。
対象は、2007〜17年に同国のプライマリケアおよび病院に登録された糖尿病患者と、年齢や性などをマッチングさせた非患者の一般住民(対照群)各58万127例(計116万254例、平均年齢66.70歳、女性43.6%)。糖尿病患者群の平均HbA1cは7.1%、登録時の平均罹病期間は2年だった。
中央値で6.6年(四分位範囲3.1〜9.8年)の追跡期間中に、なんらかの骨折は糖尿病患者群7万5,502例(13.0%)、対照群7万1,546例(12.3%)で発生し、1,000人・年当たりの発生率はそれぞれ22.2%、21.1%だった。
骨折リスクは微増、3つの危険因子を特定
多変量Cox回帰分析により年齢、性、疾病手当、婚姻、都市在住、非北欧圏での出生などを調整し、対照群に対する糖尿病患者群の骨折リスクのハザード比(HR)を求めた。その結果、有意なリスクの上昇が認められた(HR 1.07、95%CI 1.05〜1.08、P<0.001)。
骨折の種類別では、骨粗鬆症性骨折(HR 1.05、95%CI 1.03〜1.06)、大腿骨近位部骨折(同1.11、1.09〜1.14)と、いずれもリスクの有意な上昇が確認された(全てP<0.001)。また、死亡リスク(HR 1.31、95%CI 1.30〜1.32、P<0.001)も同様に高かった。
骨折の危険因子を検討したところ、痩せ型(BMI 25未満)、長期の罹病期間(15年以上)、インスリン製剤の使用、少ない身体活動が抽出された。ただ、糖尿病患者群の55%はこれらの危険因子のいずれにも該当していなかった。
以上から、Axelsson氏らは「糖尿病患者における骨折リスクの上昇は極めて小さいことが示唆された。また、今回の検討で浮き彫りになった骨折の危険因子は、該当する糖尿病患者に有効活用できるだろう」と結論している。
(松浦庸夫)