【ワシントン時事】国際通貨基金(IMF)は31日公表した最新の世界経済見通しで、2023年の中国の成長率を昨年10月の前回予想から大幅に引き上げた。新型コロナウイルスの感染封じ込めを図った「ゼロコロナ」政策の転換による経済活動の再開を踏まえ、中国がけん引する形で世界景気の底打ちも視野に入れる。ただ、中国の不動産不況は深刻で、同国の景気回復には不透明感が漂う。
 「昨年10月時点に比べ、見通しは暗くない」。IMFのチーフエコノミスト、グランシャ氏は31日の記者会見で、世界景気が今後「転換点」を迎える可能性を明言した。IMFは23年の世界成長率を2.9%と、前回予想より0.2ポイント上方修正した。
 理由の一つが、中国のゼロコロナ撤回だ。人の移動が正常化することなどから、23年の中国の成長率は5.2%と、前年の3.0%から大幅に回復すると見込んだ。
 一方、IMFは世界経済の下振れリスクとして、コロナ感染の再拡大や不動産危機の深刻化による「中国の回復停滞」を真っ先に挙げた。グランシャ氏は「中国の不動産部門はかつて成長の重要な要素だった。しかし問題が片付かなければ、成長エンジンにはならない」と指摘した。
 IMFは中国の成長率が24年、4.5%へ鈍化すると予想。その後も「企業の勢いが減退し、構造改革の進展も遅れ、中期的には4%を下回る」と見通した。
 けん引役の中国経済に不安がつきまとう中、底打ち後の世界景気の行方は視界不良だ。グランシャ氏は「完全な回復への道のりは始まったばかりだ」と述べ、動向を注視する考えを示した。 (C)時事通信社