ビタミンD結合蛋白質(DBP)遺伝子の変異体は、ビタミンDの代謝に影響を及ぼすことが知られているが、DBPアイソフォームをコードする遺伝子型の違いが大腸腺腫再発に対するビタミンD3やカルシウム補充の効果に影響を及ぼすかは不明だ。米・Emory UniversityのDavid C. Gibbs氏らは、ビタミンD欠乏と関連し、血中ビタミンDと大腸がんリスクの関連性に影響を及ぼすことが観察研究によって示されているDBP2アイソフォームをコードするrs4588*A対立遺伝子を持つ人では、ビタミンD3およびカルシウム補充による大腸腺腫再発リスクの低下効果が高いことをJAMA Oncology2023年1月26日オンライン版)に報告した。

ビタミンD/カルシウム補充の意義を検討

 大腸腺腫切除後の再発予防を目的にビタミンD3(1,000IU/日)および/またはカルシウム(1,200mg/日)を補充する多施設二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験では、補充による再発リスクの低下が示されなかったと報告されている(N Engl J Med 2015; 373: 1519-1530)。しかし、ビタミンDの代謝はDBPアイソフォーム(DBP1f、DBP1s、DBP2)により異なり、DBP2はDBP1f、DBP1sと比べ25-ヒドロキシビタミンD〔25(OH)D〕濃度低値と一貫して関連する。Gibbs氏らはこれまでに、DBP2をコードする遺伝子型を持つ人では血中25(OH)D濃度と大腸腺腫リスクが逆相関すること(Am J Epidemiol 2018; 187: 1923-1930)、大腸がん患者の診断前血中ビタミンD濃度と死亡率の関連はDBPアイソフォームによって異なることを報告している(Int J Cancer 2020 147: 2725-2734)。

 今回同氏らは、DBPアイソフォームの違いによりビタミンD3および/またはカルシウムの補充が大腸腺腫再発リスクに及ぼす影響について、上述の臨床試験データから遺伝子型判定および追跡データが得られた1,604例を対象とする二次解析を実施。3〜5年の追跡期間中に1つ以上の腺腫が認められた場合を再発とし、再発予防効果をDBPアイソフォームごとにポアソン回帰分析を用いてリスク比(RR)および95%CIで推定した。

DBP2をコードする遺伝子を持つ人では有効

 解析の結果、rs4588*A対立遺伝子(re4588*ACまたはAA)でコードされたDBP2を持つ735例において、非補充に対するビタミンD3補充による腺腫再発のRRは0.84(95%CI 0.72〜1.00)、同様にカルシウム補充によるRRは0.83(同0.70〜0.99)、両方補充によるRRは0.76(同0.59〜0.98)だった。一方、DBP2を持たない869例では、ビタミンD3および/またはカルシウム補充のRRは0.98から1.09の範囲であり、統計的に有意でなかった。

 以上からGibbs氏らは、「今回の研究により、DBPアイソフォームをコードする遺伝子型によって大腸腺腫再発に対するビタミンD3および/またはカルシウム補充の効果が異なることが初めて示された。ビタミンD欠乏症に関連するDBP2アイソフォームをコードする rs4588*A対立遺伝子を持つ人では、大腸腺腫予防のためにビタミンD3とカルシウム補充が特に有益であることを示唆している」と説明。「これらの知見から、DBP2をコードするrs4588*A遺伝子型判定は臨床的に有用で、個人別の腺腫予防推奨の指針になる可能性がある」と述べている。

編集部