【キーウ時事】授業中の空襲警報、地下シェルターへの避難。ロシアの侵攻を受けるウクライナの首都キーウ(キエフ)の公立学校に通う子供たちの日常だ。警報は1日3回鳴る日もあれば、3時間続く日もある。「新たな日常」に子供たちは慣れ、適応していた。
 ▽整然とシェルターに
 1月31日午後、キーウ市内の公立学校の教頭アリナ・ザハルチュクさん(27)を取材中、この日2回目の空襲警報が鳴った。ザハルチュクさんの後について廊下に出ると、児童生徒は慣れた様子で避難を始めており、警報発令から6分後には校舎地下のシェルターへの避難が完了した。
 シェルターの壁にはクラス名と人数が書かれた張り紙。児童生徒はクラス名が書かれた張り紙の下に集まり、教師が人数を確認する。警報発令中はシェルターから出られないため、子供たちはそれぞれ避難に備え用意していた食料や飲み物を持ち込んでいた。
 警報は16分で解除され、低学年の子供から授業に戻り始めた。表情に緊張は見られない。女性教員は「(子供は)笑顔も浮かべている。楽観的なのよ」。解除から7分後には授業が再開した。
 ▽相談や特別授業も
 小学4年生の教室で空襲警報は怖いか尋ねると、一斉に「ノー」という答えが返ってきた。キーウではこの日の日中、30分に満たない空襲警報が3回出た。市で空襲警報が出るのは1月26日以来だ。ザハルチュクさんは「明るく笑っていても、心の奥底では抱えているものがあるかもしれない」と指摘。学校には子供の相談に乗る臨床心理士が勤務し、特別授業も行っているという。
 取材した公立学校の児童生徒は約800人で、うち100人は侵攻開始を受けて転入した避難民だ。実際に登校している児童生徒は450人。残る350人はオンライン授業で、その一部は国外を含む避難先にいる。
 侵攻に伴いオンラインに移行した授業が対面に戻ったのは、新学期が始まった昨年9月。当初は空爆に備えた避難訓練を実施したが、すぐに「実生活での実践」(ザハルチュクさん)に変わった。高校1年の生徒は「前より早く変化に対応できるようになった」と胸を張る。
 ▽ドローン被害
 学校近くの小さな発電所を狙ったとみられるドローンの破片が、学校に飛んできたこともあった。窓から飛び込んできた破片は教室の壁を突き抜け、廊下の壁に突き刺さった。夜間で負傷者はいなかったが、壁には修復した痕が残っていた。
 空襲警報で度重なる授業の中断が、学校側の悩みの種だ。ザハルチュクさんは「不便だが、(子供たちは)適応してきている。さらに悪いことが起きないよう望むが、起きても彼らは適応するだろう」と話した。 (C)時事通信社