過体重や肥満に対して減量効果が期待される運動およびカロリー制限食。中国・University of Hong KongのFrancesco Recchia氏らは、運動およびカロリー制限食による内臓脂肪組織減少への用量反応効果を検討し、結果をBr J Sports Med(2023年1月20日オンライン版)に報告した。
RCT 36件・2,190例をメタ解析
過体重や肥満の是正に対して推奨される運動とカロリー制限食。Recchia氏らによると、これらは減量に伴うBMIの低下が期待できるものの、BMI低下は心代謝性疾患の危険因子である内臓脂肪の減少には結び付かないと指摘。
そこで同氏らは、PubMed、EMBASE、CINAHL、Web of Scienceから18歳以上の過体重例および肥満例を対象とした運動またはカロリー制限食による減量効果を検討したランダム化比較試験(RCT)54件を抽出。必要なデータが十分な36件について、ベースラインと比較した内臓脂肪減少に対する運動およびカロリー制限食の用量反応効果を検討するメタ解析を実施した。
36件・計2,190例を運動群(983例)、カロリー制限食群(394例)、対照群(813例)に分け、運動またはカロリー制限食による内臓脂肪減少の総効果量(ES)および用量反応効果との関連を検討した。各群の介入期間は運動群が4週〜2年間、カロリー制限食群は12週〜1年間だった。内臓脂肪量の評価はMRIまたはCTにより行われた。
両群ともに内臓脂肪減少するも用量反応効果には相違
メタ解析の結果、対照群と比べた運動群の内臓脂肪の有意な減少効果が認められた(ES −0.28、−0.37〜−0.19、P<0.001、I2=25%)。また、この効果は1週間当たり1,000カロリー消費ごとに−0.15(−0.23〜−0.07、P<0.001)の用量反応効果が示された。加えて、ウエスト周囲長においても平均差3.15cmに相当する内臓脂肪の有意な減少効果が確認され(−0.41(−0.60〜−0.22、P<0.001、I2=43%)、用量反応効果も認められた(1,000カロリー消費/週ごとに−0.27、−0.41〜0.13、P<0.001)。
一方、カロリー制限食群でも同様に有意な減少効果が確認されたものの(ES −0.53、−0.71〜−0.35、P<0.001、I2=33%)、用量反応効果において有意差は示されなかった(同−0.03、−0.12〜−0.18、P=0.64)。ウエスト周囲長においても、平均差4.67cmに相当する内臓脂肪の有意な減少効果が確認されたが(−0.59、−1.03〜−0.16、P=0.013、I2=76%)、用量反応効果では有意差は認められなかった(−0.29、−0.58〜0.00、P=0.048)。
以上から、Recchia氏らは「肥満および過体重における運動による内臓脂肪の減少では用量反応効果が示唆された一方、カロリー制限食では確認されなかった」と結論。両者の差については、メタ解析の対象とした36件のRCTの大半で中程度のバイアスが示されている点を踏まえ、運動群に比べカロリー制限食群はサンプル数が少ないことが理由との見解を示している。
(松浦庸夫)