オーストラリア・University of SydneyのGiovanni E. Ferreira氏らは、22種の疼痛に対する8クラスの抗うつ薬の有効性をプラセボと比較したシステマチックレビュー26件を包括的に解析。その結果、いずれの疼痛に対しても抗うつ薬の有効性を示す確実性が高いエビデンスを提供するレビューはなかったとBMJ(2023; 380: e072415)に発表した。
156件・2万5,000例超の試験を解析
Ferreira氏らは、PubMed、EMBASE、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trialsに2022年6月20日までに登録された研究を検索。成人の各種疼痛に対する抗うつ薬の有効性をプラセボと比較したシステマチックレビュー26件を抽出した。
システマチックレビューには156件・2万5,000例超の試験が含まれ、22種の疼痛において44件の比較が行われていた。検討対象とされた抗うつ薬は8クラスで、多い順に三環系抗うつ薬(TCA)が12件、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が11件、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)が8件だった。
42件中31件が「効果なし」、または「どちらとも言えない」
解析の結果、42件中11件の比較において、9種の疼痛に対しプラセボと比べて抗うつ薬が有効であることを示すエビデンスが提供されていた。しかし、確実性が高いエビデンスは0件、中等度のエビデンスは4件で、慢性腰痛〔0(疼痛なし)~100(最悪の疼痛)の疼痛スコアの平均差-5.3、95%CI -7.3~-3.3〕、術後疼痛(同-7.3、-12.9~-1.7)、神経障害性疼痛(同-6.8、-8.7~-4.8)、線維筋痛症(リスク比1.4、95%CI 1.3~1.6)においてプラセボに対しSNRIが有効であることを示していた。
抗うつ薬の有効性を「なし」または「どちらともいえない」としていたのは31件で、5件で4種の疼痛に対する非有効性のエビデンスが提供されていた。ただし、確実性が高いエビデンスは0件だった。中等度は1件で、機能性ディスペプシアに対してTCAが有効でないことを示していた(疼痛スコアの平均差-2.3、95%CI -7.3~2.8)。エビデンスの確実性が「低い」または「極めて低い」としていたのは26件で、17種の疼痛に対する抗うつ薬の有効性は「どちらともいえない」とされていた。
以上の結果から、Ferreira氏らは「疼痛に対して抗うつ薬を処方する際は、より繊細なアプローチが必要であることが示唆された」と結論。「確実性が中等度のエビデンスに基づき抗うつ薬の有効性が示された研究でも、それが臨床的に意義のある効果かどうかは不明。例えば、SNRIによる疼痛軽減効果は100点満点の疼痛スコアでプラセボとの差が10点未満だった」と付言している。
また、解析対象とした試験の45%は、企業との利害関係が示唆される(企業が依頼または資金提供した試験で利益相反が開示されていない)ものだったため、同氏は「結果の解釈には注意が必要」と指摘している。
(太田敦子)