慶応大発のベンチャー企業「ハートシード」(東京都新宿区)は10日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作った心筋(心臓の筋肉)細胞の「塊」を重い心不全患者に移植する臨床試験(治験)を行ったと発表した。こうした手法は世界初で、移植は成功し、経過も良好という。
同社によると、移植は昨年12月中旬、心筋が壊死(えし)して心機能が低下した60代男性に対し、東京女子医科大病院(新宿区)で行われた。治験は男性以外に計9人を予定している。2024年に終えた後、国による承認を目指す。
同社はiPS細胞由来の心筋細胞約1000個を塊にした心筋球を作成。この心筋球約5万個を男性の心臓に特殊な注射器を使って移植した。心筋球が定着して成長することで、心機能の回復を目指す。移植後、懸念された大きな不整脈は見られず、1年をかけて安全性と有効性を調べる。
iPS細胞由来の心筋細胞移植は、大阪大なども実施しているが、同大などは心筋細胞をシート状にして心臓表面に貼り付ける方法でハートシードとは異なる。同社社長を務める福田恵一・慶応大教授(循環器内科)は「壊死した心筋細胞を補填(ほてん)し、心臓の機能を元に戻すための大きな一歩だ」と話している。 (C)時事通信社
iPS心筋の「塊」移植=世界初の治験、経過良好―慶大発ベンチャー
(2023/02/10 18:59)