Clostridioides difficile感染症(CDI)は、医療関連の感染症の中で最も多く、頻回の下痢便を伴う腸炎を発症する上に再発性も高く、非常につらい疾患である。開発中の経口マイクロバイオーム薬SER-109は第Ⅲ相二重盲検ランダム化比較試験(RCT)ECOSPOR Ⅲの主解析で、プラセボに比べ主要評価項目である投与後8週間のCDI再発の相対リスクを68%低下させた(N Engl J Med 2022; 386: 220-229)。今回、健康関連QOL(HRQOL)に関する二次解析の結果、患者にとって重要な転帰であるHRQOLも有意に改善することが示された。詳細は、米・University of Houston College of PharmacyのKevin W. Garey氏らが、JAMA Netw Open(2023; 6: e2253570)に報告した。
疾患特異的なHRQOL尺度で評価
CDI腸炎は、抗菌薬使用後の腸内細菌叢の乱れに伴い発症する場合が多く、病院内や高齢施設で集団感染が見られることもある。フィダキソマイシンやバンコマイシンは増殖期の細菌に対しては有効だが、腸内細菌叢を回復させることはできない。HRQOL低下の遷延や腸炎の再発は、生産性の損失、不安、うつ症状につながることから、重要な治療標的とされている。
SER-109は、Firmicutes門の細菌の芽胞を精製した経口マイクロバイオーム製剤で、代謝過程でC. difficileと競合するように設計されている。
ECOSPOR Ⅲでは、米国とカナダの56施設でCDI再発歴があり標準治療で無症候となった成人患者182例を登録。SER-109群(89例)とプラセボ群(93例)にランダムに割り付け、1日1回4カプセル投与し3日間治療した。
二次解析の評価項目は、CDI特異的なHRQOL質問票であるC. difficile Quality of Life Survey(Cdiff32)によるHRQOLで、ベースライン時、投与1週目、8週目に評価した。
患者背景は、平均年齢±標準偏差(SD)が65.5歳±16.5歳、女性が59.9%、白人が93.4%だった。ベースライン時のCdiff32スコア±SDは、SER-109群とプラセボ群で同等だった(52.0±18.3点 vs. 52.8±18.7点)。
1週目から有意差、8週目も維持
解析の結果、プラセボ群に比べSER-109群では、投与1週目という早い時期にCdiff32総スコアが有意に改善(26.9% vs. 49.4%、P=0.012)。有意差は投与8週目も維持された(48.4% vs. 66.3%、P=0.001)。8週目のプラセボ群に対するSER-109群の最小二乗平均差は11.3(95%CI 1.4~21.2、P=0.03)だった。
プラセボ群に比べSER-109群では、Cdiff32の全3領域(身体・精神・社会)で早い時期からスコアが改善したが、特に身体スコアとその下位領域スコアで有意差が認められ、投与8週目まで持続した(8週目の最小二乗平均差:身体スコア14.1、95%CI 3.4~24.8、P=0.01、身体一般16.1、同3.6~28.7、P=0.01、身体特異12.6、同2.2~23.0、P=0.02)。
HRQOLの改善は、プラセボ群では主に非再発性のCDIで見られたのに対し、SER-109群では臨床転帰に関係なく認められた。
Garey氏らは「HRQOLは再発性CDI患者にとって重要な臨床転帰だが、今回の第Ⅲ相RCTの二次解析において、SER-109はプラセボと比べ疾患特異的なHRQOLを迅速かつ持続的に改善した」と結論している。
(小路浩史)