慢性腎臓病になると、動脈硬化につながる血管の石灰化を防いでいる血液中の物質が減少することを東京医科歯科大学病院の萬代新太郎助教らが発見し、14日までに米心臓協会の専門誌サーキュレーション・リサーチ電子版に発表した。将来、心筋梗塞や脳卒中を招く動脈硬化の新たな診断法や治療薬の開発が期待される。
 動脈血管の石灰化は、本来は骨を形成する遺伝子群が動脈壁で働き、リン酸カルシウムが沈着して起きる。発見したのは、この働きを抑える「マイクロRNA」と呼ばれる物質で、慢性腎臓病では特定の4種類が減っていた。
 萬代助教や同大大学院生小出高彰さんらは、血液中を多数流れる微小な「循環細胞外小胞」の中身を調べ、4種類のマイクロRNAを突き止めた。小胞にはさまざまなマイクロRNAやたんぱく質などが含まれ、臓器同士で必要な物や情報をやりとりしていると考えられる。
 発見した成果と既存の薬剤を応用し、マウス実験では大動脈で骨形成遺伝子群の働きを抑えることができた。萬代助教は「循環細胞外小胞の内容物と役割を解明する研究は、まだ扉が開いたところ。より副作用が少なく、新しい治療戦略を構築したい」と話している。 (C)時事通信社