火災時の主な死因の一つで、有毒な一酸化炭素(CO)とシアン化水素(HCN)を体内から速やかに排出させる新しい化合物の合成に成功したと、同志社大などの研究グループが発表した。ガス中毒で昏睡(こんすい)状態のマウスに投与したところ、85%以上が蘇生したという。研究グループは臨床試験に向けた研究を進めており、5~10年での薬剤開発を目指している。研究成果は21日、米国科学アカデミー紀要に掲載された。
開発したのは、ヘム鉄と環状オリゴ糖の「シクロデキストリン」2種からなる粉末化合物。それぞれ水に溶かした上で混ぜて投与すると、血中でCOやHCNと結び付き、尿として排出される特性がある。
実験では、アクリル素材を燃やして発生したCOとHCNを吸わせたマウスに、昏睡状態となってから5分後に水溶液を注射した。その結果、投与した13匹のうち11匹は数分で血圧が回復して動きだした。投与成分は2時間後にはほぼ排出され、体内には残っていなかった。投与しなかった18匹はすべて死んだ。
総務省消防庁によると、建物火災の死者の4割近くがCOなどのガス中毒で亡くなっている。設備の整った病院で高濃度酸素を吸入させる方法はあるが、火災現場での治療法はまだないという。
この化合物は室温で長期保存が可能で持ち運びやすく、現場で水に溶かして注射すれば、速やかな解毒効果が期待できる。同志社大理工学部の北岸宏亮教授は「医師や企業の協力を得て、さらなる開発を進めていきたい」と話している。 (C)時事通信社
火災ガスの解毒成分開発=一酸化炭素など体外に―同志社大

(2023/02/21 05:19)