神奈川県藤沢市の会社社長小沢克年さん(54)は「難病患者支援の会」のあっせんで2021年にキルギスに渡航した。しかし、現地で事前とは異なる説明を受けたことなどに不信感を募らせ、移植を取りやめた。
小沢さんは18年11月、急性腎不全と診断された。国内で腎移植の機会を探ったが、インターネットで調べると、20年近く待つ必要があると知った。
小沢さんの支援に動いたのは、コーチや監督を務めた地元の高校ラグビー部の教え子らだった。募金に奔走し、1500万円が集まった。
知人の紹介で「難病患者支援の会」を訪問すると、当初、中国での移植を勧められた。命を落とすドナー(臓器提供者)を出したくないと希望を伝えた際、理事の菊池仁達容疑者(62)は「死体から移植するから大丈夫」と説明したという。
キルギスに渡航したのは21年12月。到着後、直前に移植を受けた外国人患者が死亡し、日本人女性の患者も危篤状態になったと聞かされた。事前に聞いていた死体移植ではなく、生体移植であることを説明されたのも現地でだった。「臓器を金で買っているとマスコミが騒ぐ」。こう口止めされるなどして不信感が募り、22年1月、手術を受けずに帰国した。「支援の会」に払った費用は自己資金も含めて2000万円以上。返金を求めたが今も約1000万円が戻っていない。
海外での移植は「経済的に優位な国の患者による非倫理的行為」との批判がある。ただ、日本国内の臓器提供件数は海外に比べ極端に少なく、腎移植手術は約15年待ちともいわれる。小沢さんは「ドナーが少ない現状の中で、海外での移植の道を閉ざすのはどうかと思う」と語る。
移植医療に詳しい浜松医科大学の大磯義一郎教授は「国はドナーが意思表示をしやすいような取り組みを進めているが、まだ足りない。国民の意識を高めていくことが大切だ」と話した。 (C)時事通信社
現地渡航後、異なる説明=不信募らせ帰国、費用戻らず―「支援の会」相談の男性・臓器あっせん

(2023/02/28 10:11)