国立がん研究センターは15日、2010年にがんと診断された患者約34万人の10年生存率が53.3%だったと発表した。前回調査(09年)より6.9ポイント下がった形だが、今回からは国際的な算出方法を初採用し、がんのみが死因となる場合の生存率をより正確に推定したという。同センターは「生存率改善の傾向は続いており、今回の結果を治療方法選択の参考にしてほしい」と説明している。
 同センターは、全国のがん診療連携拠点病院など316施設の34万1335人について10年後の生存率を算出した。今回からは、がんのみが死因となる状況を仮定して計算し、国際的にも広く使われる「純生存率(ネット・サバイバル)」の手法を採用した。従来使ってきた「相対生存率」も、がん以外の死因の影響を除いて算出するが、胃がん大腸がんなど高齢者に多いがんでは生存率が過大評価される傾向があったという。
 生存率を部位別に見ると、胃がんが57.6%で、相対生存率と比べると9.5ポイント低かった。同様に、大腸がんは8.8ポイント低い57.9%、前立腺がんは15.6ポイント低い84.3%だった。
 全体の生存率は53.3%で、7.2ポイント低い。ただ、今回と前回の相対生存率を比べると、今回は60.5%で、前回より0.3ポイント上昇していた。
 同センターがん対策研究所の石井太祐さんは「算出方法変更によって生存率は下がったが、過大評価が是正されただけで、改善傾向は変わらない。より正確に推定できた今回の生存率を一つの参考にしてほしい」と話している。
 調査は5年生存率も算出した。14~15年に診断された患者全体の生存率は66.2%だった。部位別では、前立腺がん(95.1%)や女性の乳がん(91.6%)などが高かった。 (C)時事通信社