国土交通省が発表した2023年の公示地価では、コロナ禍からの経済活動正常化を反映して商業地が全国平均で2年連続上昇した。特に国内旅行客や訪日外国人客(インバウンド)が各地に戻りつつあり、観光地や繁華街で地価が上昇に転じる動きが目立つ。
内外の旅行客に人気の浅草寺(東京都台東区)近くの調査地点では上昇幅が8.8%と昨年(1.3%)から拡大し、都内の商業地で最大となった。昨年は15.5%下落した大阪市の道頓堀地区の地点は1.0%上昇。昨年横ばいだった京都市の祇園地区の地点も6.3%上昇した。
国内旅行客は昨年10月からの需要喚起策「全国旅行支援」を追い風に回復。観光庁統計では月ごとの日本人延べ宿泊者数はコロナ前水準に持ち直し、店舗の売り上げ増にも寄与している。同月には水際対策の入国制限も大幅に緩和され、「今後の外国人観光客の回復期待感もある」(国交省)ことが地価を押し上げた。
地方でも、静岡県熱海市の熱海銀座周辺地点の上昇幅が11.7%(昨年5.2%)に拡大。奈良市や金沢市中心部、世界遺産・厳島神社がある広島県廿日市市の宮島、島根県出雲市の出雲大社前といった観光地のほか、札幌市のすすきの駅周辺の複数地点など繁華街でも下落から上昇に転じた。
一方、日本三景の宮城県松島町の地点は2.6%下落(昨年5.2%下落)、北海道函館市の五稜郭周辺は1.8%下落(同3.1%下落)するなど、下落幅は縮小しつつもマイナスが続く地点もある。国交省担当者は「観光客がまだ十分に戻り切っていない」と指摘。地価回復にばらつきが見られる。 (C)時事通信社
観光地、上昇に転換=コロナ禍から旅行客回復―公示地価

(2023/03/22 17:41)