予期せぬ妊娠の末、相談できずに孤立出産して死産や流産した女性が警察の取り調べを受けたり、逮捕されたりする事例が相次いでいる。専門家は「医師が事件性の有無を判断できるような基準を定めるべきだ」と指摘する。
 熊本市にある慈恵病院の蓮田健院長によると、親に妊娠を知られると縁を切られるとの恐怖から周りに相談できないケースが多いという。同病院では、病院にのみ身元を明かして出産する「内密出産」や匿名で乳幼児を預かる「赤ちゃんポスト」を行い、孤立出産した女性を支援している。
 蓮田院長は「死産や流産した女性に寄り添わないといけないはずなのに、警察が(遺棄を疑って)取り調べたり、下着を(任意で)持っていったりして犯罪者扱いする現実がある。最高裁の逆転無罪によって、こうした現実が変わることを期待したい」と述べた。
 その上で、捜査機関は孤立出産による死産、流産への対応に慣れていないと強調。「医学的に見て、どういう場合に事件性がないと判断できるかについて、医師会と警察庁が共同でガイドラインを策定すべきだ」との考えを示した。 (C)時事通信社