雄マウスの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から卵子を作り、子どもを誕生させることに、大阪大の林克彦教授らのチームが成功した。哺乳類の雄の細胞から卵子を作製したのは世界初という。研究成果の概要は25日までに英科学誌ネイチャーに掲載された。
マウスや人の性別はXとYの性染色体の組み合わせで決まり、「XY」なら雄、「XX」なら雌になる。林教授らは、加齢によってY染色体が消え、X1本だけの細胞があることに着目。雄マウスから作製したiPS細胞を数代にわたって培養し、Y染色体のない細胞を作った上で、特殊な化合物を使って「XX」の細胞を作り出した。
これを卵子に育てて別の雄の精子と体外受精させ、計630個を雌の子宮に移植。7匹の子どもが誕生し、全ての子が成長することも確認できた。
この技術を活用するとX染色体を増やすことが可能となり、林教授は「(女性のX染色体が欠けて発症する)ターナー症候群などの治療法開発に役立つのではないか」と説明した。
ただ、人の誕生に応用するには課題が多い。iPS細胞から人の卵子を作るには技術的に10年程度かかると見込まれるだけでなく、倫理的な議論が欠かせない。林教授は「技術の安全性を調べるのはわれわれの責任だが、どう使うかは社会に決めてもらうしかない」と話している。 (C)時事通信社
雄マウスから卵子、子も誕生=世界初、iPS細胞で―大阪大など
(2023/03/25 05:40)