政府が3月31日に発表した少子化対策のたたき台では、2024年度から3年間の優先事項として現金給付の強化を掲げた。しかし、裏付けとなる財源は決まっておらず、岸田政権が目指す「こども予算倍増」はその基準となる金額すらあいまい。どのように財源を確保して政策を実現するのか、道筋は見えないままだ。
 たたき台では児童手当を巡り、所得制限の撤廃や支給期間の延長、多子世帯への増額を盛り込んだ。さらに男性の育児促進へ、「産後パパ育休」などを子供の両親が取得すれば休業前の手取りを全額保障するなど、経済的な支援策がずらりと並ぶ。財源としては、年金や医療、介護といった社会保険から拠出する案が取り沙汰されるほか、自民党内からは国債発行も検討すべきだとの声も上がっている。
 だが、岸田文雄首相は具体的な財源について説明を避けてきた。自民党内では多子世帯への児童手当について、第2子に最大3万円、第3子以降は最大6万円に増額するよう求める声も浮上。この場合、識者の試算では年間で2.5兆円規模の追加財源が必要となる。
 政府は首相をトップとする新たな会議で財源の検討を進める方針。鈴木俊一財務相は31日の閣議後記者会見で国債の活用に慎重な姿勢を示し、「恒久的な施策には恒久的な財源が必要だ」と強調した。岸田首相は消費税増税について「当面触れることは考えていない」としており、消費税以外で財源を確保する必要がある。
 国の少子化対策予算は既に増加傾向にあり、当初予算ベースで22年度は約6.1兆円。国際比較が可能な「家族関係社会支出」は20年度で約10.8兆円に上る。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは「数兆円規模の追加財源確保はハードルが高い。安定財源の確保に向け、広く税による負担を検討すべきではないか」と指摘する。政策の実現は国民の理解を得られるかにかかっている。 (C)時事通信社