インターネットの普及に伴い、2000年代初頭から急激に広まったネット交流サイト(SNS)。民間調査会社ICT総研によると、日本での普及率は82%、利用者は8200万人を超え、今後さらに拡大する見通しだ。スポーツ界でも活用が当たり前になる中、各団体や選手はどのような取り組みに力を入れ、どんな課題を抱えているのか。現状を探った。
◇大谷翔平「527万」
スポーツ系のSNS公式アカウントには100万を超えるフォロワーを持つものも少なくない。J1・C大阪のフェイスブックは約111万、英語をメインに発信する女子テニスの大坂なおみ(フリー)はツイッター、インスタグラムで計400万近い数を誇る。大谷翔平(エンゼルス)のインスタグラムは約527万と、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の活躍に合わせて急増した。
投稿内容は千差万別。試合などの情報に加え、新聞やテレビでは伝わらない舞台裏や選手の素顔、日常が分かる投稿はファンを喜ばせ、多くの支持を集める。プロ野球日本ハムの新庄剛志監督は昨年5月の公式戦開始前に監督室から生放送し、その日のスタメンを発表した。大相撲の場所中は若手親方が中心になり、テレビ中継の「裏」でライブ配信。取組の解説に加え、軽妙なおしゃべりでもファンを楽しませている。
SNSの活用を加速させたのが新型コロナウイルスの脅威だった。20年春ごろからスポーツイベントが次々に中止された「穴」を少しでも埋め、ファンとのつながりを維持するために重要度が増した。全日本柔道連盟の担当者は「大会ができない中、デジタル情報の発信に取り組んだ」と振り返る。親しみやすい文面を心掛けるといった試行錯誤が実り、21年東京五輪開催時のツイッター閲覧数は、選手の活躍にも後押しされて他競技を抑えてトップになった。
プロ野球巨人も20年ごろから本腰を入れ始め、現在のユーチューブ登録者数は当時から8倍以上の58万人に。J1川崎は使い方が巧みで、選手がアニメのキャラクターなどに仮装する秋のハロウィーン企画は恒例になりつつある。
スムーズなSNS運用の一助になっているのが、日本バレーボール協会など複数の競技団体が取り入れる外部委託だ。費用はかかるが作業の一部をプロに任せることで、SNSごとに異なる特性に対応しやすくなるという。日本オリンピック委員会(JOC)の関係者は「(内部の人間だけで運営すると)踏み外してしまうことがある」と言い、不用意な投稿による「炎上」などのトラブルを回避する狙いもあると明かす。 (C)時事通信社
コロナ禍で活用加速=巨人「8倍」、巧みなJ1川崎―スポーツとSNS(上)

(2023/04/03 07:21)