サルの胚性幹細胞(ES細胞)を実験容器内で培養して胚盤胞に似た「ブラストイド」を生み出し、別の雌ザルの子宮に移植して着床させたと、中国科学院神経科学研究所や清華大などの研究チームが6日付の米科学誌セル・ステムセルに発表した。着床後に胎児まで成長することはなかったが、人のブラストイドの子宮への移植は国際的に禁止されており、サル実験の成果が人の不妊治療に役立つという。
ES細胞は受精卵が成長した胚盤胞の内部細胞塊を培養してつくる。皮膚などの細胞に遺伝子群を導入してつくる人工多能性幹細胞(iPS細胞)と同様に、実験容器内で増やし続けることができ、ブラストイドを多数生み出せる。このため本物の体外受精卵を使う場合に比べ、効率良く着床実験を行える。
着床の障害は不妊の大きな原因の一つだが、人では実験できないため、具体的なメカニズムの解明が進んでいない。このためオーストリア科学アカデミー分子生物工学研究所などの研究チームは2021年に、女性から採取した本物の子宮内膜を実験容器内で培養し、人のブラストイドを「着床」させる実験を行ったとの論文を発表している。
中国チームはカニクイザルのES細胞から生み出したブラストイドを8匹の雌ザルの子宮に移植。このうち3匹で着床したことを超音波検査で確認し、妊娠を示すホルモンも検出した。しかし、ブラストイドは本物の胚盤胞とは異なるため、その後成長せずに消失した。 (C)時事通信社
サルの疑似胚盤胞で着床=雌の子宮に移植、成長はせず―人の不妊治療に貢献期待・中国チーム

(2023/04/07 00:12)