【シドニー時事】オーストラリアで野草を生かした先住民の食習慣が脚光を浴びている。野草は肉と相性の良いスパイスとして使えるほか、抗菌作用のある茶や薬にもなり、新型コロナウイルス禍を機に、健康を志向する人々から重宝がられるようになった。医食同源の知恵が詰まった先住民の「薬膳」を試してみては。
 先住民のアボリジニやトレス海峡諸島民は、カンガルーやワラビー、ワニ、鳥のエミューなどをタンパク源としてきた。先住民の食文化の普及活動をしているマリー・バーバリックさんは「生肉はにおいやくせが強いので、下処理をしたり、香りを付けたりするのに野草は欠かせない」と話す。代表的なのがレモンマートルという香草で、ひき肉に練り込んだり、揚げ物の衣にまぶしたりすると、食べやすくなり、爽やかな風味が楽しめる。
 シドニー王立植物園のコーディネーター、カルカニ・チュールブラさんは「古来、先住民はレモンマートルを薬としても使ってきた。お茶のように煎じて飲んだり、蒸気を吸ったりすると、のどの痛みや鼻づまりを和らげられる」と解説する。レモンマートルはビタミンEやカルシウムが豊富で抗菌作用があり、コロナ禍で注目された。家庭でも手軽に栽培でき、人気が広がっている。
 他にも豪固有のホウレンソウやミントも先住民の料理に多用されている。ただ、毒性のある野草もあり、むやみに採取しないよう注意が必要だ。チュールブラさんは「食文化は人と人をつなぐもの。先住民への理解を深めてもらう上で大切な要素だ」と強調している。 (C)時事通信社