開頭手術をせずに遺伝子を脳内に運び、特定の部位に出現させることをサルで実証したと京都大ヒト行動進化研究センターなどの研究グループが20日、発表した。治療につながる遺伝子を脳内に運ぶことで、パーキンソン病などの神経疾患の治療法開発につながることが期待されるという。論文は同日、米国の国際学術誌「サイエンス・アドバンシス」に掲載された。
 脳疾患の治療は、脳内に薬剤や電極を入れるため、開頭手術をすることが多い。マウスでは開頭せずにウイルスベクター(遺伝子の運び役)を血管に投与して脳内に運ぶことに成功しているが、サルなどの霊長類ではこれまでうまくいっていなかった。
 研究グループは、マウスで使われたものと同様の遺伝子を組み込んだウイルスベクターと、直径1~4ミクロンの微小な泡をマカクザルの腕の血管内に投与し、頭の外側から脳に超音波を当てた。その結果、毒物や細菌が血液を通じて混入するのを防ぐ脳内の「関門」が一時的に広がることでウイルスベクターが脳内に入り、遺伝子が脳の目標部位に現れたことを確認した。
 研究グループは今後、パーキンソン病にかかったサルを使い、治療につながる遺伝子を脳内に運ぶ実験を計画している。京都大ヒト行動進化研究センターの高田昌彦特任教授は「体への負担が大きい開頭手術を行わない遺伝子治療の実用化に向け、将来はヒトへの臨床応用も目指したい」と話している。 (C)時事通信社