人工妊娠中絶のための飲み薬「メフィーゴパック」の薬事承認が了承された。妊娠初期の中絶方法に手術以外の選択肢が加わることで、女性の心身の負担軽減につながる可能性がある。一方、海外と比べ薬の価格は高額になる見通しで、費用面の課題が指摘されている。
 メフィーゴパックは、妊娠継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させる働きがある「ミソプロストール」の2種類の薬剤で構成されている。国内の臨床試験(治験)には、妊娠9週までの18~45歳の中絶を希望する女性120人が参加し、投与後24時間以内に112人が中絶した。約6割に下腹部痛嘔吐(おうと)などの副作用が出たが、いずれも軽症か中等度だった。
 厚労省によると、2021年度の人工妊娠中絶は約12万6000件に上る。妊娠初期の中絶方法は金属製器具を使う手術が中心で、母体への負担も大きい。世界保健機関(WHO)は「安全性に劣る時代遅れの中絶法」と指摘していた。
 WHOは経口中絶薬について、妥当な価格での提供を求める「必須医薬品」に指定しており、海外では1000円以下で入手可能な国もある。一方、日本では通常、中絶手術に保険が使えず、中絶薬も妊娠初期の手術と同水準の10万円程度になるとの見方がある。
 女性ライフクリニック(東京)の理事長で産婦人科医の対馬ルリ子さんは「一つの大きな進歩。薬の運用面などで女性が恐怖感を抱いたり、つらい思いをしたりしないような医療体制の整備が必要だ。海外での使用例なども参考にした上で、中絶を選んだ女性が次の妊娠を期待できるような支援をしてほしい」と話している。 (C)時事通信社