冬眠中のクマは半年前後、穴にこもっているのに、「エコノミークラス症候群」にならないのはなぜか。ドイツ・ミュンヘン大などの国際研究チームは、冬眠中のクマと夏に野外で活動しているクマから血液を採取して分析し、血栓をできやすくするたんぱく質を発見した。冬眠中のクマではこのたんぱく質「HSP47」が大幅に減少していた。
HSP47の働きを妨げる物質を見つければ、新たな予防・治療薬の開発につながる可能性があるという。論文は25日までに米科学誌サイエンスに掲載された。
同症候群は飛行機旅行や災害時の車中泊などで長時間体を動かさず、血液の流れが悪くなると起きる。脚の太い静脈でできた血栓が、心臓を経由して肺の動脈に移動して詰まると、呼吸困難や心肺停止に至る場合がある。血栓は、本来は血管が損傷した際に傷口をふさぐ血小板のほか、白血球の一種の好中球やHSP47などによって形成される。
研究チームは、慢性期の脊髄損傷患者では、ほぼ寝たきりの状態で血栓があまりできないことにも注目。健康な人にベッドで横になり続けてもらう実験を行ったところ、27日後にはHSP47が大幅減少していた。冬眠に入ったクマと同様の現象とみられ、減る仕組みの解明が期待される。 (C)時事通信社
冬眠でなぜ血栓できない?=クマの血液分析、原因物質発見―エコノミー症候群の新薬期待

(2023/04/25 05:14)