A型インフルエンザウイルスに感染したマウスに低濃度のエタノール蒸気を吸入させると、重症化を防ぐ効果があったと、沖縄科学技術大学院大の石川裕規准教授や新竹積教授らが27日発表した。吸入時の濃度は4%だが、気道の細胞表面を覆う液体中では20%に高まり、ウイルスを不活化して感染の拡大を抑えるという。培養した人の肺細胞を使った実験では、濃度20%で毒性がないことも確認した。
 石川准教授は「人で効果や安全性を評価する臨床研究の準備をしている。鳥インフルエンザも対象に研究を進めたい。新型コロナウイルスにも効果を期待できる」と話している。人の場合はぜんそくなどの薬液を霧状にして吸入する「ネブライザー」を使う方法が考えられる。論文は米感染症学会誌に掲載された。
 実験はマウス54匹を、エタノール蒸気を1日2回(1回10分)吸入する群と水蒸気を吸入する群に均等に分け、感染後の経過を観察。その結果、水蒸気群は半分以上が死んだが、エタノール蒸気群は肺の感染が抑えられ、ほとんどが生き延びた。
 人で実用化される場合、アルコールにアレルギーがある人は吸入できないほか、吸入後は血中アルコール濃度が一時的に上昇するため、車を運転できない可能性がある。
 石川准教授らは、高濃度の消毒用エタノールを加湿器に入れて室内に噴霧するのは引火や爆発の危険があり、絶対にやめてほしいと呼び掛けている。 (C)時事通信社