将来の発症リスクの高さよりも、治療法がその患者にとって効果的かどうかに着目する方が、社会全体としての治療効果が高くなる―。京都大大学院医学研究科などの研究グループが28日までに、高血圧治療で人工知能(AI)を活用した次世代の医療戦略を提唱する論文を国際疫学会の学術誌に発表した。
 高血圧患者に対する血圧管理の治療法が効果的かどうかは、AIが患者の肥満度や糖尿病の有無、1人暮らしかどうかなど約20項目のデータを評価することで個別に推定できるという。研究グループは2015年に米国で発表された、高血圧患者約1万人のデータを活用し、治療によって3年後に心筋梗塞などの発症リスクをどれだけ抑えられたかを分析した。
 その結果、最高血圧(収縮期血圧)を120mmHg未満に抑える治療法は、高リスク患者全てに対して必ずしも効果的だと言えない一方、低リスク患者の中にも治療が有効な人がいることが裏付けられた。
 発症を防げる確率をAIで推計したところ、治療効果の高い患者に絞った場合は11人当たり1人だった。高リスク患者全体では61人当たり1人にとどまった。
 京大白眉センターの井上浩輔特定准教授は「治療の有効性が高い患者を効率的に特定し、治療効果を最大化できる可能性が示された」と説明。「ほかの患者には別の治療法を検討して提案することで、健康格差の是正につなげられるのではないか」と話している。 (C)時事通信社