コロナ禍で経済的に苦しくなった人に国が生活費として最大200万円を貸し出した特例貸付制度について、厚生労働省は返済免除の対象を拡大する方針を固めた。自治体や社会福祉協議会の就労支援を受けてもなお返済が難しい人の支援を強化する。制度利用者の中には、予定通り返せない人も一定数いるとみられ、事実上の給付扱いとなる人を増やし、生活再建により力を入れる。
 同制度はコロナ禍で生活が困窮した人に対する支援策の柱。住民税非課税世帯や生活保護の受給を始めた世帯などは、返済免除の対象となる。加えて、免除要件に該当しないものの返済が苦しい人には、返済を1年間猶予する措置を取っている。
 厚労省は、猶予者の中には、就労や家計管理の支援を受けても、病気療養や離職などの理由で返済が難しい人がいると判断。自治体や市町村社協が作成する意見書に基づき、都道府県社協が返済免除を判断できる新たな仕組みを検討している。同省は具体的な対象者の基準や生活再建支援内容を詰めた上で、5月中にも自治体へ通知する。
 同制度に基づく貸し付けは2022年9月までに約335万件が実施され、貸付総額は1兆4268億円。早い人は今年1月から返済が始まった。同省などによると、2月末までに返済対象となった約157万件のうち、実際に返済されたのは約4割に当たる約63万件。90万件以上は、本人から免除や猶予の申請がないまま未返済となっている可能性がある。 (C)時事通信社