新型コロナウイルスワクチンは感染拡大を止める「切り札」とされ、幅広い世代で接種が進められたが、「5類」移行後は高齢者や医療従事者らに重点が置かれる。世界保健機関(WHO)は3月、健康な成人や子どもへの追加接種を推奨しないとの指針を公表しており、専門家は「今後は高齢者などの重症化予防を目的とした接種に変わっていくだろう」との見方を示している。
 国内では、2021年2月から医療従事者への接種が始まり、その後高齢者に対象が拡大。現役世代が打ち始めた6月には、1日の接種回数が100万回を突破した。12月からは3回目、22年5月には高齢者を中心に4回目を実施。9月にはオミクロン株対応ワクチンの接種も始まり、高齢者らの中には最多で5回の接種を受けた人もいる。
 1~2回目の接種率はそれぞれ81.1%、80.2%(今年4月27日時点)と8割超に達した。しかし、3回目は68.7%に低下し、オミクロン株対応ワクチンの接種率は45.0%に落ち込んだ。
 5類移行後、当面は高齢者や医療従事者らに対象を限定し、年2回の接種機会が与えられる。12歳以上は9~12月に再開されるが、原則年1回となる。
 WHOは3月、新型コロナワクチン接種の指針を改定。高齢者や医療従事者らに対しては一定の間隔で打つよう勧めた一方、60歳未満の健康な成人や子どもへの2回目の追加接種は推奨しないとした。
 東京医科大の浜田篤郎特任教授(渡航医学)は「WHOはワクチンの安全性と効果は認めており、ハイリスク者への接種は推奨している」と強調。「接種の目的は感染を防ぐことから重症化予防に変わりつつある。今後は高齢者などを中心に接種が進められるだろう」と話した。 (C)時事通信社