イタリア・Istituto di Ricovero e Cura a Carattere Scientifico(IRCCS)のFabrizio De Benedetti氏らは、マクロファージ活性化症候群(MAS)へのヒト抗インターフェロン(IFN)-γ抗体emapalumabの至適用法・用量および有効性と安全性を検証する第Ⅱ相非盲検シングルアーム試験を実施。「emapalumabは高用量グルココルチコイドが奏効しなかったMAS患者の大半に寛解をもたらした」とAnn Rheum Dis(2023年3月31日オンライン版)に報告した。

IFN-γの抑制がMAS改善をもたらすか

 MASは続発性の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)の一種であり、しばしば、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)や成人発症スチル病(AOSD)の重篤な合併症として現れる。動物モデルやヒトのex vivoデータから、IFN-γの関与を示唆する仮説が提唱されている。

 今回の試験はイタリア、フランス、スペイン、英国、米国の5施設で28日間実施し、1年間追跡。有効性と安全性を評価し、MAS治療薬としてのemapalumabの妥当性および至適用法・用量を確認することを目的とした。

 有効性は治療開始後8週時のMAS寛解の有無で評価。MAS寛解は、医師の臨床評価〔MASの臨床徴候/症状を10段階のVisual Analogue Scale(VAS)で評価。1以下を消失とする〕と臨床検査所見(フェリチン、白血球数、血小板数、AST、ALT、乳酸脱水素酵素、フィブリノーゲン)の改善と定義した。

初回6mg/kg、以後3日ごとに3mg/kgを投与

 対象は14例〔年齢中央値11.0歳(範囲2~25歳)、女性10例〕。sJIA/AOSD診断時の年齢中央値は10.5歳(同1~17歳)で、13例は16歳以前にsJIAを発症、1例は16歳9カ月で発症したAOSD患者だった。

 全例がemapalumab治療の前に高用量グルココルチコイドの静注投与を受けていた。また、6例が計19のMASエピソードを経験していた。このうち5例はIL-1受容体拮抗薬anakinraとシクロスポリンも投与され、1例はシクロスポリンが投与されていた。

 emapalumabの投与量は原発性HLH患者を対象とした過去のデータから、IFN-γ産生率、emapalumabのクリアランス、IFN-γ高値の中和に必要なemapalumab濃度を参照し、初回用量6mg/kg、その後は維持用量として3日ごとに3mg/kgと設定した。

13例が寛解を達成、主なAEはウイルス感染

 14例全例が試験を完遂し、追跡終了時点で生存していた。試験開始時、患者の血清CXCケモカインリガンド(CXCL)9濃度は著明に高かったが、emapalumab投与後、濃度は急速に低下した。これはIFN-γが中和されたことを意味し、用量の設定が適切であったことを示唆するものである。

 8週までに13例(93%)がMAS寛解を達成した。寛解達成までの日数中央値は25日で、最短例は9日だった。

 13例から88件の有害事象が報告され、emapalumabと無関係の心肺不全と好中球減少症が各1件あったものの、それ以外のものは軽症~中等症であった。最も頻度が高かった有害事象は感染症だったが、全てウイルス感染であり細菌感染や日和見感染はなかった。emapalumabと関連ありと報告されたウイルス感染は6件(3例)で、そのうち5件がサイトメガロウイルス(CMV)感染だった。CMVの再活性化を来した1例は重症化したが、この例を含めウイルス感染は全例が自然治癒または標準治療で回復した。

CMVのスクリーニングが必要

 以上の結果を踏まえ、De Benedetti氏らは「IFN-γはsJIA/AOSDに続発するMASの重要なドライバー因子であることが明らかになった。また、emapalumab投与に伴うIFN-γの中和によって、高用量グルココルチコイドが奏効しなかったMAS患者の寛解が達成できた」と結論。「ただしウイルス感染、特にCMVには注意を払い定期的なスクリーニングが必要である」と付言している。

木本 治