デンマーク・University of Southern DenmarkのNils J. Boe氏らは、自然発生の頭蓋内出血(ICH)について、脳葉型と非脳葉型で出血後の主要心血管イベント(MACE:ICH再発、虚血性脳卒中、自然発生の脳実質外出血、心筋梗塞、全身性塞栓症、血管死の複合)のリスクに差があるかを検討する大規模コホート研究を実施。その結果、非脳葉型ICHに比べ脳葉型ICHでMACE発生の割合が高く、特にICHの再発率が高いことが明らかになったとJAMA Netw Open(2023; 6: e235882)に報告した。
主要評価項目はMACE、ICH再発、虚血性脳卒中、心筋梗塞
ICH経験者は、ICHの再発、虚血性脳卒中、心筋梗塞を含むMACEのリスクが高い。しかし、発生部位によるMACEのリスクを評価した研究は少なく、エビデンスは限られる。
Boe氏らは今回、自然発生ICHの発生部位によるMACEのリスクを検討する大規模コホート研究を実施した。対象は、2009年1月1日〜18年12月31日に初発の自然発生ICHで入院した50歳以上の患者2,819例。ICHが孤立性脳室内出血、大型または情報不足で分類不能であった例は除外した。
Danish National Patient RegistryやDanish Stroke Registryを用いて、対象をICH発生日から研究期間終了(2018年12月31日)まで追跡し、イベントの発生は医療記録で確認した。ICHの分類は、単一でテント下、単一でテント上深部(基底核、被殻、視床)、複数でテント下またはテント上深部のみに発生した場合を「非脳葉型」とし、それ以外を「脳葉型」とした。
主要評価項目はMACE、ICH再発、虚血性脳卒中、心筋梗塞。初発ICHの発生部位およびベースライン時の他の危険因子(心房細動および閉塞性血管疾患など)別に100人・年当たりの調整ハザード比(aHR)をKaplan-Meier解析により算出した。なお、逆確率重み付け法を用いて潜在的な交絡因子を調整した。
脳葉型患者におけるICH再発の予防が重要
解析対象は2,289例で、内訳は非脳葉型ICH患者が1,255例〔男性680例(54.2%)、平均年齢73.5±11.4歳〕、脳葉型ICH患者が1,034例〔同495例(47.9%)、75.2±10.7歳〕だった。
2,048人・年(平均2.1年)の追跡期間におけるMACE発生率は、非脳葉型ICH患者(100人・年当たり7.91、95%CI 6.93〜9.03)と比べ脳葉型ICH患者(同10.84、9.51〜12.37)で高かった〔調整ハザード比(aHR)1.26、95%CI 1.10〜1.44〕。
また、ICH再発率も非脳葉型ICH患者(100人・年当たり1.24、95%CI 0.89〜1.73)と比べ脳葉型ICH患者(同3.74、3.01〜4.66)で高かった(aHR 2.63、95%CI 1.97〜3.49)。
一方、虚血性脳卒中(脳葉型:100人・年当たり1.45、95%CI 1.02〜2.06、非脳葉型:同1.77、1.34〜2.34)や心筋梗塞(脳葉型:同0.42、0.22〜0.81、非脳葉型:同0.64、同0.40〜1.01)の発生率に、部位による差は認められなかった(虚血性脳卒中:aHR 0.81、95%CI 0.60〜1.10、心筋梗塞:同0.64、0.38〜1.09、vs. 非脳葉型)。
以上から、Boe氏らは「脳葉型ICHは、その後のMACEおよびICH再発のリスクと関連したが、虚血性脳卒中や心筋梗塞との関連はなかった。この関連は、閉塞性血管疾患(脳梗塞、末梢動脈疾患、心筋梗塞)の既往がある患者で最も強く、ベースライン時に心房細動を合併していない患者でも見られた。脳葉型ICH患者に対しては、ICHの再発予防戦略が重要である」と結論している。
(今手麻衣)