オランダ・University of GroningenのHiddo J.L. Heerspink氏らは、過体重/肥満の成人におけるGLP-1受容体作動薬セマグルチドの体重減少効果をプラセボと比較検討した第Ⅲa相ランダム化比較試験(RCT)Semaglutide Treatment Effect in People with obesity(STEP)1~3の事後解析を行い、同薬の腎機能の改善効果を検討。その結果、セマグルチドが過体重/肥満の2型糖尿病患者におけるアルブミン尿〔尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)〕を改善したと、Diabetes Care(2023; 46: 801-810)に発表した。
RAS阻害薬/SGLT2阻害薬の使用例でも改善
STEP 1および3では、過体重/肥満で非糖尿の成人を対象に生活習慣への介入(STEP 1)または集中行動療法(STEP 3)に加えて、セマグルチド(目標用量2.4mg)またはプラセボを週1回皮下投与する群に2:1でランダムに割り付け、68週間治療した。
STEP 2では、過体重/肥満の2型糖尿病患者を対象に生活習慣への介入に加えてセマグルチド目標用量2.4mg、同1.0mgまたはプラセボを週1回皮下投与する群に1:1:1でランダムに割り付け、68週間治療した。いずれの試験でも、セマグルチドは0.25mg週1回投与から開始して目標用量まで漸増した(16週間で2.4mg、8週間で1.0mgまで漸増)。
主解析では、STEP 1~3ともプラセボ群に比べセマグルチド群で有意な体重減少が示され、5%以上体重が減少した患者も有意に多かった。
今回の事後解析の評価項目は、①過体重/肥満の2型糖尿病患者における68週時UACRのベースラインからの変化(STEP 2のみ:1,205例)、②同期間における推算糸球体濾過量(eGFR)の変化(STEP 1~3のプール解析:3,379例)とした。
解析の結果、68週時におけるUACRのベースラインからの変化量は、プラセボ群の+18.3%に対してセマグルチド1.0mg群で-14.8%(プラセボ群に対する推定治療差-28.0%、95%CI -37.3~-17.3%、P<0.0001)、同2.4mg群で-20.6%(同-32.9%、-41.6~-23.0%、P=0.003)といずれも有意な改善が認められた。
プラセボに対するセマグルチドの有意なUACR改善効果は、ベースラインのBMI、HbA1c、eGFR、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬またはSGLT2阻害薬の使用で層別化したサブグループでも一貫して認められた。
改善効果はHbA1c、体重、血圧低下効果に関連
顕性アルブミン尿から微量アルブミン尿、または微量アルブミン尿から正常アルブミン尿への改善が見られた割合は、プラセボ群の29.2%に比べセマグルチド1.0mg群で57.9%(P=0.0004)、同2.4mg群で56.1%(P=0.0014)と有意に多かった。
HbA1c、体重、収縮期血圧を調整後のプラセボと比べセマグルチド2.4mgのUACR改善効果は58.6%(95%CI 26.5~97.8%)で、UACRに対するセマグルチドの効果の半分以上がHbA1c、体重、収縮期血圧の低下に関連している可能性が示唆された。
68週時におけるeGFRのベースラインからの変化量は、プラセボ群の-0.21%(95%CI -0.85~0.42%)に対しセマグルチド群では-0.70%(95%CI -1.17~-0.22%)と有意差がなかった(P=0.2351)。セマグルチド2.4mg群の多くはベースライン時の腎機能が正常範囲であったため、プラセボ群と比べeGFRの変化量はわずかだったという。
腎機能に関連する有害事象の頻度は、STEP 1と2で同程度で比較的少なく、STEP 3では報告がなかった。全体的にセマグルチドの忍容性は良好で、治療中止につながる有害事象の増加は認められなかった。
以上の知見を踏まえ、Heerspink氏は「セマグルチドは過体重/肥満の2型糖尿病患者におけるアルブミン尿を改善したが、2型糖尿病のない腎機能正常例におけるeGFRの改善は認めらなかった」と結論している。
(太田敦子)