うつ病は、脳卒中後の精神症状として高頻度に発症する。英・King's College LondonのLu Liu氏らは、脳卒中後の期間別にうつ病の発症率を検討、結果をPLoS Med2023; 20: e1004200)に報告した。

77件・2万超をメタ解析

 脳卒中後うつ病(Poststroke depression;PSD)は、機能不全やQOL低下、死亡率上昇などとの関連が指摘されている。しかし、PSDの有病率は過小評価されており、約10年前に報告されたメタ解析での有病率は30%前後という(Br J Psychiatry 2013; 202: 14-21Int J Stroke 2014; 9: 1017-1025)。

 そこでLiu氏らは、最新のデータに基づくPSDの発症率を検討するシステマチックレビューおよびメタ解析を実施。MEDLINE、EMBASE、PsycINFO、Web of Science Core Collectionに2022年11月4日までに報告され、18歳以上の脳卒中患者を対象に事前のうつ病評価が行われた観察研究論文79件を抽出、77件・2万7,401例をメタ解析対象とした。失語症およびうつ病の既往がある者は除外した。

 77件におけるうつ病の診断は、臨床面接が21件(米国精神医学会の『精神疾患の分類と診断の手引き(DSM)』:20件、臨床医や看護師間のコンセンサス:1件)を用いており、うつ病評価スケール56件(ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D):17件、抑うつ状態自己評価尺度(CES-D):6件、老年期うつ病評価尺度(GDS):6件、ベックうつ病自己評価尺度(BDI):5件、患者健康質問票(PHQ):5件など)を用いていた。

30%が脳卒中後1カ月以内に発症

 メタ解析を実施したところ、PSDを発症した患者の割合は27%(95%CI 25〜30%)だった。脳卒中後の期間別では、1カ月以内が30%(同24〜36%)、1〜5カ月が27%(同24〜30%)、6カ月〜1年が22%(同18〜26%)、1年超が29%(同22〜35%)だった。診断法別では、臨床面接が24%(95%CI 21〜28%)、評価スケールが29%(同25〜32%)だった。

3カ月以内の発症者の半数が1年後も持続

 さらに、脳卒中後3カ月以内にPSDを発症した患者に限定して解析した結果、1年以内のうつ病持続率は53%(95%CI 47〜59%)だった一方、1年以内の寛解率は44%(同38〜50%)だった。加えて、脳卒中後3〜12カ月の遅発性発症率は9%(95%CI 7〜12%)、1年以内の累積発症率は38%(同33〜43%)、PSDの71%(同65〜76%)が3カ月以内にうつ病を発症していることも分かった。

 以上から、Liu氏らは「脳卒中後3カ月以内の早期にPSDを発症する患者では、1年後も症状が持続しているリスクが高かった」と結論。「脳卒中患者を対象としたモニタリングの必要性がある」と付言している。

松浦庸夫