花粉症をはじめとしたアレルギー性鼻炎や喘息などの治療に用いられるロイコトリエン受容体拮抗薬。妊娠中に使用した場合、子供の注意欠陥・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)、トゥレット症候群などの発達障害リスクと関連するのか―。台湾・National Health Research InstitutesのHui-Ju Tsai氏らは、両者の関連を検討した大規模コホート研究の結果をJAMA Netw Open(2023; 6: e231934)に報告した。
曝露期間、累積用量別の解析も実施
米食品医薬品局(FDA)は母親の妊娠中のロイコトリエン受容体拮抗薬の1つであるモンテルカストについて、深刻な精神神経学的イベントを含む副作用の恐れがあるとして市販後データを監視し、2020年に黒枠警告を付加している。しかし、ロイコトリエン受容体拮抗薬と精神神経学的イベントの関連性については議論が続いている。
Tsai氏らは今回、母親の妊娠中のロイコトリエン受容体拮抗薬への曝露と児の発達障害リスクとの関連を検討。台湾国民健康保険研究データベース(National Health Insurance Research Database)から、2009~19年に登録された妊婦と出生児のデータを抽出した。喘息またはアレルギー性鼻炎と診断された妊婦から生まれた単胎児57万6,157例のうち、傾向スコアマッチング法で選出したロイコトリエン受容体拮抗薬曝露児1,988例と非曝露児1万9,863例を対象に、ADHD、ASD、トゥレット症候群の発症リスクを比較した。
また、ロイコトリエン受容体拮抗薬の曝露期間別(1~4週間 vs. 4週間超)および累積用量別(1~170mg vs. 170mg超)の解析も行った。解析にはCox比例ハザードモデルを用いた。
いずれのリスクの上昇は認められず
解析の結果、ロイコトリエン受容体拮抗薬の胎内曝露とADHD(調整ハザード比1.03、95%CI 0.79~1.35、P=0.82)、ASD(同1.01、0.65~1.59、P=0.96)、トゥレット症候群(同0.63、0.29~1.36、P=0.24)のリスクとの間にいずれも有意な関連は認められなかった。また、ロイコトリエン受容体拮抗薬の曝露期間および累積用量との関連もなかった。
今回の研究からTsai氏らは、「喘息やアレルギー性鼻炎を有する妊婦へのロイコトリエン受容体拮抗薬投与は、出生児の発達障害リスクを上昇させないことが示された。ただしコホート研究のため、さらなる研究でこの知見を検証する必要がある」と結論している。
(小谷明美)