屋内外に大量のごみをため込んだ「ごみ屋敷」が、過去5年間に全国で5224件確認されていたことが、環境省が3月に発表した調査報告書で分かった。生活困窮やセルフネグレクト(自己放任)が原因のケースもあり、強制的にごみを撤去するだけではすぐに再発する可能性が高い。根本的な解決には居住者の生活再建支援が不可欠で、自治体では廃棄物対策や福祉関連部署が一体となって取り組んでいる。
 全国1741市区町村を対象に、2018年4月~22年9月までの状況を調べた。都道府県別では東京の880件が最多で、愛知538件、千葉341件と続く。22年9月時点で全体のうち約半数は改善したが、2636件は対応継続中だ。
 東京都足立区は13年1月に全国で初めてごみ屋敷への対応を目的とした条例を制定した。居住者の生活再建を通じ、再発防止につなげることに重点を置く。事案ごとに関係部署の担当者が集まって「ケース診断会議」を開催し、居住者への接触方法や対応方針を協議している。生活環境保全課の担当者は「各所管がチームとなって居住者の生活再建を第一に考えながら解決することが大事だ」と強調する。
 同区へのごみ屋敷関連の相談件数は22年9月末までの累計で311件。このうち、84.6%に当たる263件は解決済みとしている。条例では強制的にごみを撤去する代執行もできることになっているが、これまでに実施例はないという。
 横浜市は、市内18区ごとにごみ屋敷対策に特化した対策連絡会議を設置。高齢者支援や生活保護などの担当者が集まって、案件ごとに一元的に対応している。ごみ屋敷の背景には地域での孤立や加齢による身体機能低下があるとの考えから、福祉的なアプローチを重視する。福祉保健課の担当者は「時間や労力がかかる場合もあるが、福祉的な観点で居住者と関係性を築いていくことが必要だ」と指摘している。 (C)時事通信社