コロナ禍で打撃を受けた中小企業に対する実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」は、企業の倒産を抑えて経済の下支えに貢献した。その半面、本来なら事業継続が困難なのに存続する「ゾンビ企業」が増加したことも事実。融資の返済は今夏以降にピークを迎えるが、物価高が追い打ちをかける中、返済できずに事業継続を断念する動きが増える恐れもある。
 ゼロゼロ融資は、政府支援を受けた都道府県などが借入金の利子を3年間負担する制度で、2020年3月に開始。民間金融機関は21年3月、政府系金融機関は22年9月まで申請を受け付けていた。融資実績は昨年12月末時点で約249万件、計約43兆円に上る。
 東京商工リサーチによると、20年度の企業倒産件数は前年度から2割近く減少、21年度は57年ぶりの低水準に抑えられた。ゼロゼロ融資が奏功した格好で、金融関係者は「多くの企業が疲弊したコロナ禍でも、倒産は歴史的に少なかった」と語る。
 しかし、その裏で借入金の利子を利益で払えない企業が急増。国際決済銀行の定義を基にした帝国データバンクの推計では、こうしたゾンビ企業は21年度に国内で18万8000社と、コロナ禍前から3割増加した。原材料価格の高騰も重なり、融資を受けたものの抜本的な事業構造改革に踏み出せない企業も多い。
 民間金融機関によるゼロゼロ融資の返済は昨年12月末時点で約4割が始まっておらず、返済開始は今年7月から来年4月にかけ集中する。このため政府は今年1月、借り換え負担を軽減する制度を開始。しかし、足元では膨張した債務の借り換えに行き詰まる企業が増え始めている。
 企業再生を手掛ける「みらいエフピー」(東京)の小林広樹社長は、倒産件数は今後増加する可能性が高いと予測。その上で、「成長性がある事業は再生すべきだが、単純な借り換えや延命に終始してはならない」と指摘する。 (C)時事通信社