5時間未満の短時間睡眠、9時間超の長時間睡眠、1時間超の昼寝、いびき、無呼吸などの睡眠障害脳卒中の発症リスクと強い関連性があることが、大規模症例対照研究INTERSTROKE studyの参加者データを用いた研究で示された。アイルランド・National University of IrelandのChristine E. Mc Carthy氏らがNeurology2023年4月5日オンライン版)に報告し、「脳卒中リスクは睡眠への介入によって抑制できる可能性がある」との見方を示している。

初発脳卒中患者と対照群の4,496例を解析

 既報から、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)などの睡眠障害は、脳卒中の重要かつ修正可能な危険因子である可能性が指摘されている。そこでMc Carthy氏らは今回、32カ国の国際多施設共同症例対照研究であるINTERSTROKE studyのデータを用いて、さまざまな睡眠障害脳卒中リスクの関連について検討した。

 対象は、初発脳卒中患者2,243例と年齢および性をマッチングした脳卒中未発症の2,253例(対照群)の計4,496例(平均年齢62歳)。脳卒中の内訳は虚血性脳卒中が1,799例、頭蓋内出血が439例であった。対象の1カ月以内の睡眠状況は質問票を用いて評価し、条件付きロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

睡眠障害の症状が5つ超で脳卒中のオッズ比5

 ベースラインの年齢、職業、婚姻状況、脳卒中の機能的指標modified Rankin Scaleスコアを調整した解析の結果、5時間未満の短時間睡眠〔オッズ比(OR)3.15、95%CI 2.09~4.76〕、9時間超の長時間睡眠(同2.67、1.89~3.78)、睡眠の質の低下(同1.52、1.32~1.75)、入眠困難(同1.32、 1.13~1.55)、睡眠維持困難(同1.33、1.15~1.53)、予定外の昼寝(同1.59、1.31~1.92)、1時間超の昼寝(同1.88、1.49~2.38)、いびき(同1.91、1.62~2.24)、荒い寝息(同2.64、2.17~3.20)、無呼吸(同2.87、2.28~2.60)は、全て脳卒中リスクの上昇と有意に関連していた。

 また、OSAスコア2~3点(OR 2.67、95%CI 2.25~3.15)および5つ超の睡眠障害の症状(同5.06、3.67~6.97)も脳卒中リスクの上昇と有意に関連していた。さらに、脳卒中リスクに影響する可能性がある喫煙や身体活動、抑うつ症状、アルコール摂取などの因子を調整した解析においても、ほとんどの睡眠の問題が脳卒中リスクに関連していた。

 Mc Carthy氏らは「今回の研究で、さまざまな睡眠障害脳卒中リスクの上昇に関連していることが示された。これらの睡眠障害脳卒中リスクのマーカー、あるいは独立した危険因子の可能性がある」と結論。その上で「今後、脳卒中予防における睡眠への介入の有効性を検証するため、臨床試験の実施が望まれる」と付言している。

(岬りり子)