厚生労働省は、経済的に苦しくなった人へ生活費を貸す「生活福祉資金」について、申請手続きを電子化する方針だ。現在は住民票などの提出が必要だが、代わってマイナンバーカードの活用を検討する。利用者の利便性向上などが目的。今年度中に有識者会議を立ち上げて具体策を議論。早ければ2025年度の運用開始を目指す。
 生活福祉資金は公費を財源とし、各地の社会福祉協議会が窓口となり、対面で貸し付けの申請を受け付けている。用途や目的によって種類が分かれ、至急現金が必要な場合に最大10万円を貸す「緊急小口資金」や、債務整理を含む生活立て直しのために最大60万円を貸す「総合支援資金」などがある。
 電子化検討の背景には、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、要件を緩和して実施した「特例貸付」がある。特例貸付では、貸付金額を緊急小口資金は最大20万円、総合支援資金は最大180万円に引き上げるとともに、支援の迅速さを優先し、申請も対面ではなく郵送で受け付けた。
 その結果、社協には申請が殺到。同省によると、緊急小口資金と総合支援資金の貸付件数は、リーマン・ショックや東日本大震災の影響があった09~11年度が計約20万件だったのに対し、特例貸付は20年3月~22年9月に計約335万件と16倍以上になった。
 しかし、特例貸付を巡っては、社協の業務負担増加や郵送でのやりとりとなったことで、申請者がどのような困り事を抱えているのかなどを詳しく把握できず、寄り添った支援につながらなかったとの問題点も指摘された。このため同省は、電子化により社協の業務負担を軽減し、必要な支援により注力できるようにしたい考えだ。 (C)時事通信社