ロシアのウクライナ侵攻で厳しい環境に置かれたウクライナ人を支援しようと、使い捨てカイロを送る活動が福島市などで行われている。市民団体代表の武田徹さん(82)=同市=は、自身も戦争体験者。インフラが破壊されて電気やガスが止まり、氷点下での越冬を強いられた人々に「何かせずにはいられなかった」と語る。
 武田さんは、テレビや新聞でウクライナの現状を見聞きし「この寒さの中でどうしているんだろう。人を傷つける武器ではなく、人を温めるものを送れないか」とカイロを思い付いた。昨年11月に団体を立ち上げ、知り合いに提供を呼び掛けるうちに、全国から約35万8000個が集まった。
 自身も幼少期、福島県郡山市で戦争を体験した。食料や衣類に困窮し、米軍のB29爆撃機が上空を飛来して自宅から5キロ先の工場が爆撃された時のことは今も鮮明に覚えている。「ウクライナでも同じことが起きている」と危機感を覚えた。
 東京電力福島第1原発事故を受け、福島市から山形県米沢市に避難した経験も原動力になった。全国各地から食料や日用品の支援を受けたことへの感謝の念から「今度は自分たちが支援する番だ」と思ったという。
 カイロの送り主は北海道から沖縄まで幅広い。お年玉で買ったという子どもからのものや、家族6人で集めたという段ボール10箱分に上るものもあった。早期の戦闘終結や活動を応援するメッセージや手紙も寄せられ「カイロは誰でも参加できる。戦争で凍えている人たちに、少しでも温まってもらいたいという気持ちがあったから集まったのではないか」と話す。
 約6万5000個は今年1~2月に発送。残りは今月下旬に船便で送り、今冬のために使ってもらう予定だ。「何としてもウクライナに届け、冬場の寒さを和らげてあげたい」と意気込んでいる。 (C)時事通信社