◇権限の在り方に課題=久元喜造・指定都市市長会長
 ―コロナ禍の3年間は。
 非常に大きな課題が残っている。感染者の把握やワクチン接種のオペレーションなどは、ほとんどを「保健所設置市」として(都道府県ではなく)政令市が行っている。都道府県の権限である入院調整や宿泊療養施設の設置運営についても、現実は政令市がやっているところもある。大部分の仕事は政令市だったのが実態だ。
 しかし新型インフルエンザ特別措置法の権限は大部分が都道府県。さらにその後の改正で都道府県の権限が強化された。実態に逆行している。
 ―具体的にどんな問題が起きたか。
 例を挙げると、コロナ対応を行う医療機関のための緊急包括支援交付金だ。政令市の医療機関も県がまとめて国に申請して配分されることとなっていたが、ある政令市では交付まで6カ月以上かかり、非常に大きな不満が出た。
 ワクチンも、政令市分を含めて厚生労働省から県に来て、県が配分している。政令市の情報が制度上(同省に)直接いかないため、同省は正確な情報を把握できていなかった。
 市町村から都道府県、国のルートで情報がいくのは平時ならいいが、危機においては正確な情報がスピーディーに集まらない。
 ―感染症対策は広域で行うべきだとの考えもある。
 これは神戸市の立場で申し上げる。ウイルスは市町村の区域も越えるが、府県の区域も越える。特に三大都市圏では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の権限は国が行使すべきだ。3年間を振り返っても、関西圏では酒類の提供について、府県で対応が違う例もあった。
 ―今国会で法改正され、感染症対応の枠組みを都道府県と医療機関が協定を結んでつくる仕組みとなる。
 問題だと思う。政令市の病院と(県は)そもそも付き合いがない。(感染症危機が起きてから)初対面で名刺交換して「お願いします」と言っても、誰が言うことを聞くのかと思う。絵に描いた餅だ。 (C)時事通信社