子ども政策の司令塔「こども家庭庁」が発足から1カ月を迎えた。国の施設などに子ども連れの人や妊婦が優先的に入場できる「こどもファスト・トラック」の推進、子どもや若者の意見を政策に取り入れる事業の創設など、子育て応援の取り組みに着手。小倉将信こども政策担当相は「円滑にスタートを切ることができた」と振り返る。一方、子ども政策を賄うための財源確保の道筋はいまだ見えていない。
 同庁は、複数省庁にまたがっていた子どもを取り巻く課題に一元的に対応するため4月1日に創設。子どもの利益を第一に考えた「こどもまんなか社会」の実現を目指す。担当相には、方針に従わない省庁に対応の是正を求める「勧告権」を付与し、各省庁より一段高い立場から総合調整機能を発揮できる仕組みとした。
 同月中旬には、こどもファスト・トラックに関する関係省庁会議を立ち上げた。子どもと子育て世帯を社会全体で応援する機運を高めようと、混雑する大型連休期間中には、国立科学博物館(東京都台東区)で子ども連れなどの優先レーンを設置。先行事例を周知し、地方自治体や民間事業者にも導入を働き掛ける。
 当事者である子どもの意見を政策に反映する事業に向けた準備も進む。小学1年生から20代までの参加者募集を始めたところ、すでに3000人が登録。「いじめ」「遊び場」などテーマごとの意見聴取は夏ごろから行う予定で、民間団体の協力を得ながら、子どもの意見を引き出す専門人材の育成にも乗り出した。
 さらに、不登校や自殺対策、子ども政策の基本的な方針「こども大綱」の策定に向け、同庁が旗振り役となって関係省庁との議論を開始した。
 一方、岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、政府は経済財政運営の基本指針「骨太の方針」の6月の取りまとめまでに、将来的な「子ども予算倍増」の大枠を示す方針。政府・与党内では社会保険料の引き上げなどが有力視されるが、経済界からは企業や従業員の負担増への反発も予想され、調整は難航が必至の情勢だ。 (C)時事通信社