新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが8日、季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する。大手企業では会食の制限やマスクの着用義務を撤廃する動きが広がり、コロナ禍を機に普及したテレワークをやめて、原則出社に戻す企業もある。一方、「今後も働く場所のベストミックス(最適な組み合わせ)を追求する」(丸紅)などと完全なオフィス回帰には慎重な声もあり、対応は割れている。
 帝国データバンクが3月に全国の企業を対象に実施した調査では、回答のあった1万1428社の4割が5類移行に伴い働き方をコロナ前に戻すと答えた。一方、コロナ前と異なる働き方を続けると答えた企業もほぼ同数に上り、特に従業員数が1000人超の企業では5割を超えた。
 ホンダは昨年4月、全部署で対面での働き方を重視する方針へ移行した。同社は「製造業は画面の中ではなく、実際にモノを見ながら直接話をすることが大事だ」(広報)と説明する。IT大手GMOインターネットグループも今年2月、5類移行を見据えて「原則週2日在宅勤務」を「原則出社」に戻した。「テレワークは人が集まって話す機会がなく、ビジネスを停滞させている」(GMO広報)との判断だ。
 「出社、在宅に関係なく生産性を高めることが大事」と話すのはNEC。同社は出社率が3~4割で推移しており、今後もテレワーク活用を続ける。出社義務をなくし、「完全テレワーク制度」を導入した三菱ケミカル(東京)も制度を維持する。
 テレワークを続ける企業の間でも、活用の度合いに幅があるのが実情だ。大和証券グループ本社は、業務特性に応じてテレワークか出社かを判断しているが、3月からは営業でも対面が中心になっているという。カシオ計算機は「現時点で出社率は6割」(広報)としており、各企業で今後も最適な働き方の模索が続きそうだ。 (C)時事通信社