政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が時事通信のインタビューに応じ、3年に及んだコロナ禍対応を振り返った。政府と専門家の役割分担について「不明確で、試行錯誤の部分があった」と指摘。次の感染症危機に備え、「しっかりとした検証を基に、平時から準備していくことが必要だ」と訴えた。
 現在の感染状況について、尾身氏は「致死率は低くなったが、死亡者数は第1波から8波までほぼ着実に増えている」と説明。高齢者らの重症化リスクが高く、流行・変異の進み方も予測困難だとして、感染症法上の「5類」移行後も「完全にガードを下げるのは少し早い」と注意を促した。
 感染症対策を講じる上での政府と専門家の役割に関し、「専門的な評価と意見を聞いた上で、政治家が最終判断するのがあるべき姿だ」と強調。だが、実際には「Go To トラベル」や東京五輪への対応で、政府が「時に専門家の意見を聞かなかったこともあった」と明かし、説明も十分ではなかったと指摘した。
 危機の際の情報発信も「本来、国がやることだが、われわれが矢面に立たざるを得なかった」とし、政府による積極的な関与を求めた。今後の課題として、感染症に対応できる医療体制整備や人材育成、デジタル化を挙げ、「『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ではいけない。司令塔組織を作っただけで終わらず、中身を詰める必要がある」と警鐘を鳴らした。
 インタビューは1日に東京都内で行われた。 (C)時事通信社