新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年度以降、6度にわたり補正予算を組むなど前例のない規模で財政支出は膨張した。コロナ禍からの経済正常化が進む一方、防衛費増額や少子化対策、物価高対応で歳出拡大圧力は強まっており、財政「正常化」への道のりは険しい。
 20年度の一般会計予算は、3度の補正予算を編成し、総額175.7兆円まで膨らんだ。コロナ前までは150兆~170兆円程度だった借換債を含む毎年度の国債発行額も、コロナ対策の財政支出に伴い20年度以降200兆円台に突入。21年の債務残高は、国内総生産(GDP)比で255%と世界最悪の水準だ。
 感染拡大から3年が経過し、海外では財政健全化にかじを切る動きも目立つ。ドイツではコロナ対応のため、公債発行を制限する「債務ブレーキ」の適用を停止していたが、23年度から復活させた。
 英国ではトラス前首相による拡張財政策が市場の混乱を招いた教訓もあり、スナク首相の下で新たな財政再建策に取り組む。米国のバイデン大統領は今年3月、大企業や富裕層への課税強化などにより、10年間で3兆ドル(約400兆円)近くの財政赤字圧縮を目指す方針を示した。
 一方、日本の財政は歳出拡大圧力にさらされ、膨張したままだ。3月に成立した23年度予算は、当初予算ベースで初めて110兆円を突破。予算にはコロナ対策にも使える予備費が依然として4兆円も計上された。
 国際通貨基金(IMF)は3月、日本に対し、コロナ対策の財政支出について「もっと迅速に引き揚げるべきだ」と指摘。東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「この3年間で合計140兆円もの補正予算が編成されており、国債発行で財源に充てた分は返済を始める時期に来ている」と話す。 (C)時事通信社