【パリ時事】世界保健機関(WHO)が5日、新型コロナウイルスを巡る「緊急事態」の終了を宣言した。これを受け、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長が「われわれは打ち勝った」と述べるなど、早くも楽観論が広がっている。ただ、人々の気の緩みや、予測が難しい新たな変異株出現で、世界の感染状況が急速に悪化する恐れは今後も残る。WHOは「危機の局面は終わったが、コロナは終わっていない」と警鐘を鳴らしている。
 「最悪なのは、どこかの国がこの(緊急事態終了の)ニュースを口実に警戒を弱めたり、コロナはもう心配ないというメッセージを国民に送ったりすることだ」。WHOのテドロス事務局長は5日の記者会見で、くぎを刺した。
 WHOは2020年1月、新型コロナの流行が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に当たると宣言。3年3カ月余りを経て宣言の解除に踏み切ったのは、集団免疫獲得などを通じて重症者や死者が世界的に減少していると判断したからだ。1週間当たりの死者数は21年1月に一時10万人を突破したが、今年4月下旬には3500人台に減った。
 しかし、テドロス氏は「コロナはこれからも存在する。新たな変異株が感染者や死者の急増を引き起こすリスクはある」と強調。世界が危機的状況に直面すれば、緊急事態の再宣言も「ためらわない」と表明した。
 WHOの緊急事態対応部門を統括するマイク・ライアン氏も「コロナは全ての人にとって、引き続き脅威だ」と指摘。その上で、感染症のパンデミック(世界的大流行)は多くの場合、「別の感染症の大流行が始まることで真の終わりを迎える。それが歴史だ」と語り、感染症対策は際限なく続くと訴えた。 (C)時事通信社