トランペットの旋律に乗り、歓声が躍る。新型コロナウイルス禍に見舞われて4シーズン目を迎えたプロ野球では、規制解除が急速に進む。侍ジャパンのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)制覇の余韻もあり、各球場にはにぎわいが戻ってきた。
 あるセ・リーグ球団の営業担当は「本当の意味でうれしい悲鳴」と言う。コロナ禍初年の2020年は、来場に伴う売り上げが前年比で8割減。観客数制限がなくなった昨季でも19年より2割少なかった。それが今年はコロナ前並みの出足に。巣ごもりでテレビ観戦や他趣味に流れたと懸念したが、「WBCが吹っ飛ばしてくれた」と喜ぶ。
 コロナ下の試行錯誤は様式を変えた。巨人の本拠地、東京ドームでは顔認証入場や完全キャッシュレス決済を導入。非接触の意識が浸透したことで、広報室は「変更はスムーズだった」とみる。
 日本野球機構(NPB)の会議は対面に戻ったが、オンラインも併用。遠方や各界の人が容易に参加できるメリットを生かしている。ファンとの交流機会が増えた中でも、西武は選手とのハイタッチを疑似体験できると好評の動画配信を今季も継続している。
 収益悪化の影響を受けた編成部門にも光が差した。20年オフにはフリーエージェント(FA)の大物選手獲得を断念した球団もあったが、補強費削減の発想から抜け出そうとしている。
 スカウトの手法もコロナ期に進化した。ヤクルトは映像共有システムを整備。選手を見極める各世代の大会も復活し、橿渕聡スカウトグループデスクは「本来の実力を見る機会が増えた。僕らもわくわくしながら見ている」と話す。
 未曽有の危機でも模索し続けた発展への道。それが新時代の力となる。 (C)時事通信社