石川県・能登半島北部で発生した地震は、新型コロナウイルス禍前の活気が戻りつつあった観光業にも痛手を与えた。コロナの「5類」移行を8日に控え、観光関係者からは「マスク着用が緩和され、旅行者が増えてきたのに残念だ」との声が上がった。
 被害が大きかった珠洲市。海岸から約200メートルの海上にそびえる景勝地の見附島は地震で山肌が一部崩れ、島まで続く石の道は立ち入りが禁止された。近くで民宿「汐嶋荘」を営む今井好生さん(89)は「屋根瓦がずれて雨漏りしている。この地震を機会に閉業しようかな」と肩を落とした。
 観光振興を担うNPO法人「能登すずなり」によると、市内に約40軒ある宿泊施設のうち8割が地震の影響で臨時休業した。昨年6月の地震でも被害を受け、女性職員(38)は「せっかくこの1年でリニューアルした施設も多いのに。夏に向けて気持ちを持ち直してほしい」と願った。
 能登半島の海岸沿いを走る国道では、落石の影響で珠洲市と輪島市の間が通行止めになった。珠洲市の「ホテル海楽荘」では、発生当日に宿泊予定だった7組がキャンセルに。従業員の60代女性は「回り道すると1時間以上かかる。コロナで3年我慢してやっと客が戻ってきたのに、連休の稼ぎ時に苦しい」と顔をゆがませた。
 被害の少ない地域にも影響は及んだ。同県七尾市の旅館22軒が加盟する和倉温泉旅館協同組合の調査によると、回答した18軒では6日時点で計約300件のキャンセルがあった。加盟旅館で被害は確認されていないが、7日も朝から旅行客の問い合わせに追われたという。担当者は「大丈夫ですと伝えている。安心して来てほしい」と語った。 (C)時事通信社