新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は2020年から雇用調整助成金(雇調金)に特例措置を導入した。企業の雇用維持に対する手厚い支援で、失業の抑制に一定程度貢献したが、約3年間で支出は6兆円規模に膨らみ、雇用保険財政の大幅な悪化を招いた。
 雇調金は、企業が従業員に支払った休業手当の一部を助成する制度。1人1日当たりの上限額は現在8355円だが、特例では最大1万5000円に引き上げ、助成率も最大100%に拡充した。経過措置を経て、特例は今年3月末に終了した。
 特例について、連合の芳野友子会長は「コロナ禍で雇用を守っていくのが大変な産業がたくさんあった。雇調金があったからこそ、雇用を維持できたところもある」と評価する。実際、コロナ流行下での完全失業率(季節調整値)は20年10月の3.1%が最高で、リーマン・ショック後の09年7月の5.5%と比べ低水準にとどまった。
 一方、この間の雇調金支給決定額は累計6兆円規模に上り、雇用保険財政は悪化した。雇調金を含む雇用保険二事業で、貯金に当たる雇用安定資金の残高は19年度の約1.5兆円から20年度以降はゼロとなり、本来は失業手当などの原資となる積立金から累計3兆円以上を借り入れるなどして急場をしのいだ。
 手厚い支援は労働力の移動を妨げ、人手不足に拍車を掛けた面もある。加藤勝信厚生労働相は特例に関し、「雇用と暮らしの安定に貢献したと考えているが、有効な人材活用が進まなかったとの指摘もある」と総括。「今後の政策の在り方について検討したい」と述べ、効果の検証などを進める方針を示した。 (C)時事通信社