新型コロナウイルスの変異株は、主に3タイプが流行してきた。現在のオミクロン株は従来のものより感染力が増した一方、致死率は大幅に低下した。ただ、感染症法上の分類が「5類」となった後も、感染力や重症化リスクが上がった変異株が出ない保証はなく、専門家は警戒を続けるよう求めている。
 国内では2020年1月に初の感染者が確認された。当初は中国・武漢株などが流行したが、21年以降は変異株が中心となり、英国由来のアルファ株、インド由来のデルタ株が流行。同年12月には、ワクチンや感染で得た免疫から逃れやすい南アフリカ由来のオミクロン株が拡大した。
 3タイプとも、既存株より感染力が強く、置き換わる形で拡大した。一方、オミクロン株では肺炎による重症化リスクが低下。厚生労働省によると、80歳以上の感染者の致死率は、デルタ株流行時(21年7~10月)の7.92%から1.69%(22年7~8月)に下がった。感染者の急増に伴い持病を悪化させて亡くなる高齢者が相次いだものの、致死率自体は季節性インフルエンザ(1.73%)並みとなった。
 オミクロン株は現在、主に4系統が流行している。22年春に主流となったBA・2系統の変異株2種の遺伝子が混ざった「XBB・1・5」や、22年夏に主流となった「BA・5」などだ。XBB・1・5の検出割合は4月23日時点で過半数の54%を占めると推定されるが、国立感染症研究所の脇田隆字所長は「今後も支配的かは推移を見る必要がある」と分析。新たな変異株の出現については「可能性がどの程度かは確率論的には言えない」と話す。
 感染症に詳しい慶応大の菅谷憲夫客員教授は「オミクロン株とは別の変異株が出てくる可能性も十分にある」とした上で、「日本はPCR検査や病床、ワクチン接種の体制が脆弱(ぜいじゃく)で、逼迫(ひっぱく)したら拡充するという場当たり的な対応に終始してきた。国は5類移行後の『平時』にこそ『有事』に備え、医療体制の整備などに努めるべきだ」と強調した。 (C)時事通信社