中国・Hunan University of Chinese MedicineのFan Zeng氏らは、ルバーブ(食用大黄)から抽出されるアントラキノン誘導体であるジアセレインの変形性膝関節症(膝OA)に対する有効性をランダム化比較試験(RCT)12件・1,732例のシステマチックレビューとメタ解析で検討。その結果、ジアセレインは疼痛の指標であるWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)およびVisual Analogue Scale(VAS)のスコア改善に関して非ステロイド抗炎症薬(NSAID)と遜色がなく、医師と患者の両方による全般的有効性評価の点ではNSAIDより優れていたとJ Orthop Surg Res(2023; 18: 308)に発表した。
投与後4週の疼痛軽減と全般的有効性はNSAIDに勝る
膝OAには根治療法がなく、症状管理に用いられるNSAIDの長期使用による胃腸障害や心血管イベントリスクの上昇、医療経済への悪影響などが問題となっている。ジアセレインは抗炎症作用を有し、膝OAの治療に用いられているが、有効性については議論がある。
Zeng氏らは、EMBASE、PubMed、Cochrane Libraryなどの医学データベースに2022年8月までに英語または中国語で収載されたRCTを検索。米国リウマチ学会(ACR)または中国整形外科学会(COA)による膝OAの診断基準に合致した患者に対し、ジアセレインまたはNSAIDを12週間以上投与したRCT 12件・1,732例をメタ解析に組み入れた。
解析の結果、NSAID群とジアセレイン群で投与期間中のWOMACスコア〔8件、標準化平均差(SMD)0.09、95%CI -0.10~0.28、P=0.34〕、VASスコア(8件、同-0.19、-0.65~0.27、P=0.42)の改善に有意差はなかった。
一方、投与終了後4週時点でのWOMACスコア(3件、SMD -0.39、95%CI -0.58~-0.19、P<0.0001)、VASスコア(2件、同-4.49、-7.89~-1.09、P=0.01)はNSAID群と比べてジアセレイン群で有意に改善していた。
また、投与終了時点での患者と医師による全般的有効性評価(4件、無効~著効の4段階で評価)では、患者〔オッズ比(OR)1.97、95%CI 1.18~3.29、P=0.01〕、医師(同2.18、0.99~4.81、P=0.05)ともに高評価とジアセレインとの有意な関連が認められた。
安全性が高くNSAID禁忌例の代替薬になる可能性
有害事象(11件)は下痢、悪心、腹痛などの消化管有害事象が最も多く、なんらかの有害事象の発現率はジアセレイン群とNSAID群で有意差がなかった(608件 vs. 614件、OR 0.83、95%CI 0.57~1.21、P=0.34)。
Zeng氏らは「NSAIDはプロスタグランジン合成阻害により解熱・鎮痛・抗炎症作用を発揮するため、消化管有害事象(穿孔、潰瘍、出血)や心血管リスク上昇の恐れがある。一方、ジアセレインのプロスタグランジン合成および上部消化管粘膜への影響は限定的であり、主な副作用は下痢で一過性かつ軽度なものが多かった。ジアセレインはこの点でNSAIDより有利であり、特に高齢患者や消化管出血および心血管疾患のリスクが高い患者においてメリットが大きい」と考察。その上で、「ジアセレインは膝OAに対して有効で、NSAIDが禁忌の患者における代替治療薬となりうることが示された。ただし、エビデンスの確実性は低かったので、より質が高く追跡期間が長い試験での検証が必要」と結論している。
(太田敦子)