アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬は、胎児への悪影響が報告されており、妊婦への投与は禁忌となっている。しかし、妊娠中のRAS阻害薬の使用により、胎児・新生児への影響が疑われる症例が継続していることから、厚生労働省医薬・生活衛生局は5月9日付の課長通知で、RAS阻害薬32成分の添付文書改訂を指示。これを受け、医薬品医療機器総合機構(PMDA)は「PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo.10」を更新。妊婦および妊娠している可能性のある女性にはRAS阻害薬を投与しないこと、妊娠する可能性がある女性では慎重に検討するよう注意喚起した。

2014年に注意喚起も遵守されず

 RAS阻害薬に関し、これまでPMDAは2014年9月に「PMDAからの医薬適正使用のお願い No.10」を発出。妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与しないこと、投与中に妊娠が判明したら直ちに中止することなどを周知してきた。

 しかし、それ以降も妊娠中のRAS阻害薬投与により、胎児や新生児への影響が疑われる症例(口唇口蓋裂、腎不全、頭蓋骨・肺・腎の形成不全、死亡など)が継続的に報告されている。特筆すべきは、医師が妊娠を把握せずにRAS阻害薬を使用していた例が複数存在する点だ。

 こうした事例を踏まえ、厚労省はRAS阻害作用を有する降圧薬32成分(ACE阻害薬、ARB、レニン阻害薬、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)の添付文書改訂を指示。それに伴い「PMDAからの医薬適正使用のお願い No.10」も更新し、以下のように呼びかけている。

1.妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないでください。

2.妊娠する可能性のある女性への投与にあたっては、必要性を慎重に検討してください。また、投与が必要な場合には、次の事項に注意してください。

•投与前及び投与中に妊娠していないことを確認してください。

•投与中に妊娠が判明した場合は、直ちに投与を中止してください。

•胎児等に与える影響を説明し、妊娠が判明した又は疑われる場合、妊娠を計画する場合は、担当医に相談するよう繰り返し患者へ説明してください。

月経遅延又は無月経、妊娠悪阻(つわり症状)、基礎体温を測定している場合は高温期の持続等

(参考)PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.10

(渡邊由貴)