米・Asana BioSciences社のPablo A. Jimenez氏らは、中等症~重症の慢性手湿疹患者97例を対象に、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)/脾臓チロシンキナーゼ(SYK)阻害薬gusacitinibの有効性と安全性を第Ⅱ相多施設共同プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験(RCT)で検討。その結果、プラセボ群と比べてgusacitinib 80mgの1日1回16週間投与群で湿疹の症状や重症度、手の痛みが有意に改善したとJ Am Acad Dermatol2023年4月22日オンライン版 )に発表した。

症状スコア71.3%改善、31.3%で皮疹消失

 同試験はPart A/Bの2部構成。まずPart Aで、ステロイド抵抗性の中等症~重症慢性手湿疹患者97例をgusacitinib 40mg群(33例、平均年齢44.2歳、女性69.7%)、同薬80mg群(32例、同46.7歳、75.0%)、プラセボ群(32例、同41.8歳、56.2%)に1:1:1でランダムに割り付けて1日1回16週間経口投与した。続く16週間のPart Bでは、gusacitinibの2群はそのまま投与を継続し、プラセボ群はgusacitinib 80mgを1日1回経口投与した。

 検討の結果、主要評価項目とした、投与開始後16週時における修正総病変症状スコア(modified Total Lesion Symptom Score;mTLSS)のベースラインからの変化(改善度)は、プラセボ群の-35.5%に対しgusacitinib 80mg群で-69.5%(P<0.005)と有意に大きく、同薬40mg群でも-49.0%(P=0.132)と有意でないものの大きかった。

 また、gusacitinib 80mg群ではプラセボ群と比べ、副次評価項目とした16週時の医師による総合評価(Physician's Global Assessment;PGA)スコア0(皮疹の完全消失)/1(ほぼ消失)の達成率が有意に高く(31.3% vs. 6.3%、P<0.05)、手湿疹重症度指数(Hand Eczema Severity Index;HECSI)スコアのベースラインからの改善度(-73.3% vs. -21.7%、P<0.001)が有意に大きかった。Visual Analog Scale(VAS)スコアで評価した手の痛みについても有意な改善が認められた(P<0.05)。

投与2週の早期からプラセボと比べ有意な改善

 さらに、gusacitinib 80mg群では投与開始後2週時において、mTLSSのベースラインからの改善度(-40.1% vs. -13.6%、P<0.001)、PGAスコア0/1達成率(12.5% vs. 0%、P<0.05)、HECSIスコアのベースラインからの改善度(-35.29% vs. -11.29%、P=0.005)にプラセボ群との有意差が見られた。

 安全性の評価では、Part A期間中に1件以上の有害事象が認められた患者の割合は、gusacitinib 40mg群で57.6%、80mg群で75.0%、プラセボ群で53.1%だった。有害事象は大部分が軽度~中等度で、gusacitinibの2群で高頻度(10%以上)に見られたのは頭痛(16.9%)、悪心(12.3%)、上気道感染症(10.8%)だった。

 以上を踏まえ、Jimenez氏らは「ステロイド抵抗性の中等症~重症慢性手湿疹患者において、gusacitinibは忍容性が高く、プラセボに比べて有意な改善効果を投与開始後早期から発揮した」と結論。「今後、より長期かつ大規模のRCTでgusacitinibの有効性と安全性を検討する必要がある」と付言している。

太田敦子