局所進行結腸がんに対する術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)の便益については意見が分かれる。スペイン・University Hospital Reina SofiaのAlvaro Arjona-Sánchez氏らは、マイトマイシンCによるHIPECと手術の併用が、局所進行結腸がんの局所制御率を改善するかを非盲検第Ⅲ相ランダム化比較試験(RCT)で検討。HIPECと手術の併用により3年局所制御率の有意な改善が示されたことなどをJAMA Surg2023年4月26日オンライン版)で報告した。

3年局所制御率、DFS、OS、安全性などを評価

 局所進行結腸がん(T4ステージ)は予後不良で、外科切除後における腹膜転移の3年再発率は約25%とされる。過去に局所進行結腸がんに対するHIPECを検討した第Ⅲ相試験はオキサリプラチンによるもの1件のみで、腹膜転移に対する便益は示されていなかった。

 Arjona-Sánchez氏らは、2015年11月~21年3月にスペインの17施設で局所進行原発性結腸がん(cT4N02M0)に対する待機的手術を予定している成人患者184例を、腫瘍減量手術とマイトマイシンCによるHIPEC(30mg/m2を60分)を同時施行する群(HIPEC群)または腫瘍減量手術のみの群(対照群)に1:1でランダムに割り付けた。両群とも術後に全身補助化学療法を施行した。

 主要評価項目は3年局所制御率とし、intention-to-treat集団における腹腔内無再発患者の割合と定義した。副次評価項目は無病生存(DFS)、全生存(OS)、合併症、治療の毒性とした。

pT4患者に限定すると、3年局所制御率の群間差はさらに拡大

 184例(平均年齢61.5±9.2歳、男性60.3%)をHIPEC群(89例)と対照群(95例)にランダムに割り付けた。追跡期間中央値は36カ月(四分位範囲27~36カ月)だった。登録時の背景は両群で同等だった。

 3年局所制御率はHIPEC群が97.6%で、対照群の87.6%と比べて高かった〔ハザード比(HR)0.21、95%CI 0.05~0.95、log-rank検定によるP=0.03〕。

 3年DFSはHIPEC群81.2%、対照群78.0%(HR 0.71、95%CI 0.41~1.22、log-rank検定によるP=0.22)、3年OSはHIPEC群91.7%、対照群92.9%(同0.79、0.26~2.37、P=0.68)で、いずれも両群で差はなかった。

 pT4患者に限定したサブグループ解析では、3年局所制御率の群間差はより著明だった(HIPEC群98.3%、対照群82.1%、HR 0.09、95%CI 0.01~0.70、log-rank検定によるP=0.003)。合併症の発生率と治療の毒性に両群で差はなかった。

 Arjona-Sánchez氏らは、これまでの報告と比べHIPECの便益および安全性が高かった理由として、①手術との同時施行により二次的な合併症を抑制できた、 ②HIPECの経験豊富なチームが施行し、腫瘍の完全切除率も高かった、 ③マイトマイシンCはその分子構造と薬物動態からHIPECに使用する薬剤として適当である―などを挙げた上で、「マイトマイシンCによるHIPECと手術の併用で局所進行結腸がんの局所制御が改善された。局所進行結腸がんの治療選択肢としてHIPECを考慮すべきである」と結論。さらに、「DFSとOSの評価には長期の追跡が必要だ」と付言している。

(小路浩史)